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【茨城】

<ひと物語>「倭文織」を特産品に 古代の織物復元目指す那珂のグループ「手しごと」会長・田中良治さん

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 旧瓜連町(現・那珂市)などで行われていたとされる古代の織物「倭文織(しづおり)」を復活させようとするグループ「手しごと」に入会し、今年で十二年目に入る。メンバー十三人のうち、たった一人の男性会員だ。

 奈良期に編さんされた「常陸国風土記」によると、同町付近では、古くから倭文織を織る人の集落があったとされる。しかし、布は現存しておらず、技術が途絶えている状態で「幻の織物とも言われているんですよ」と紹介する。

 グループでは、町の調査結果をもとに、倭文織の復元へ向け活動。縦糸に麻、横糸にコウゾが使われていると考え、一からコウゾの栽培も行っている。「当時により近づけたい」ためだ。

 当時は貴族の馬のくらの装飾などに使われていたが、現在はコースターやタペストリーなどに仕上げ、地元の祭りで展示販売をしている。

 子どものころ、東京大空襲を経験し、両親と弟と一緒に戦火を逃れた。家族とともに父親の実家がある埼玉県へ疎開。そこで中高時代を過ごし、三菱金属鉱業(現・三菱マテリアル)に入社。東海村に長年勤務し、定年まで原子力の技術者として働いた。

 転機は六十五歳の時だ。「研究ばかりして内勤が中心だったため、外に出て動き回る仕事がしたい」と、定年後に測量のパートを始め、県内各地を歩き回った。この時、外で草木染を行っているグループを見て「自分もやりたい」と強く思ったという。その矢先、住んでいた那珂市の文化祭で倭文織の展示発表を目にして一目ぼれ。グループの門戸をたたいた。

 これまでに作った作品は、ブックカバーやしおり、御朱印帳などで、日常で使える親しみやすさを意識した。糸一つ一つにこだわりがあり、染色して作品に個性を出すが「糸の色合いで自分がイメージしたものと違う作品ができたりするが、それも面白いんです」と、研究者の顔ものぞかせる。

 グループの活動は、作品展示だけではなく、後継者の育成にも力を入れ始めている。地元の瓜連小学校には「倭文織クラブ」があり、そこに出向いて教えている。

 いつかは、倭文織を地域の特産品にして発信していくという夢もある。「倭文織は素朴で味があっていい。良い物は長く継承したいじゃないですか」。倭文織への情熱は、冷めない。 (山下葉月)

<たなか・よしはる> 1939年3月生まれ、東京都墨田区出身。三菱金属鉱業(現・三菱マテリアル)に入社し、1年目から原子力研究に携わった。倭文織と同じくらい愛してやまないのは、29歳で始めた詩吟。

 

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