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【茨城】

<ひと物語>当事者の声を伝えたい 創刊2年目「ひきこもり新聞」編集長・木村ナオヒロさん(33)

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 二〇一六年十一月、引きこもり経験者でつくる「ひきこもり新聞」を創刊。計八ページのタブロイド判を隔月で発行してきた。ひきこもりらの体験記を中心に、専門家や支援団体からの寄稿などで構成。最新号の一月号では「親が死んだらどうしよう」と題し、本人や親の高齢化の問題も扱っている。「ひきこもりの実際の姿は、まだまだ知られていない。新聞の発行を続け、当事者の声や、役立つ情報を伝えたい」

 高校卒業後の計十年近くを、他人との関係をほぼ絶った状態で過ごしたが、自分では「ひきこもり」だとの認識はなかった。一人暮らしをしながら司法試験合格を目指していた三十一歳の頃、筑波大付属病院に相談に行った母親が「家族としか関わりを持っていない状況は、ひきこもり」と精神科医から言われたことが、向き合うきっかけになった。

 今も家族と一緒にカウンセリングを受けているが、一六年四月から一年間、写真の専門学校に通ったことで、ひきこもりからは“卒業”した。

 同じ年、ひきこもりを暴力的に外へ連れ出す団体がテレビなどで好意的に扱われているのを見て「本人の意思を尊重してほしい」と感じたことが新聞発行の動機になった。創刊号には、ひきこもり研究で知られる斎藤環・同大大学院教授のインタビューを掲載した。

 新聞製作の仲間は、当事者の会などを通じて募った。東京都内で開く編集会議には毎回、二十〜三十人が集まる。フェイスブックなどでの参加も含めると、百人以上が新聞づくりに携わった。ただ「活動に関わってくれるのは、元気になってきた回復期の人たち。働き出すと(忙しくなって)どんどん人数が減ってしまう」ことが悩みだ。

 また「ひきこもりの定義は『人間関係のない人』。本当のひきこもりは、こういう場に出て来ることはできない」。ひきこもりや経験者の声を「親御さんに読んでもらい、当事者の気持ちを理解してもらいたい。それが家族関係を良くし、本人が元気になる手助けになれば」と願っている。

 司法試験合格への夢は、持ち続けている。一方で「幸せってなんなのだろう」とも考える。「世間の人もそうだと思うけれど、競争に加わって勝つ、という目標にとらわれてきたように思う。自分がどういうふうに生きたいのか、もう一度、考えてみたい」

 「ひきこもり新聞」は紙版が五百円、ウェブサイトから購入できるPDF版が三百九十円。当事者向けには百円で、イベント会場などで販売している。 (酒井健)

<きむら・なおひろ> 1984年、つくば市生まれ。ひきこもり経験を経て、当事者や経験者自身が声を上げられるメディアとして「ひきこもり新聞」を創刊した。一般社団法人「全国ひきこもり当事者連合会」代表理事。

 

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