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【茨城】

イノシシ被害、県内で増加 会員減…頼みの猟友会ピンチ

わなにかかったイノシシを狙う畑井さん=かすみがうら市で

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 イノシシによる被害が県内で増えている。農作物が荒らされることに加えて、人が襲われ、けがを負う事故も起きている。被害防止のため、イノシシの捕獲に頼りにされているのが猟友会。だが、そんな頼みの綱も、会員が減り続け、活動に支障が出かねない状況になっている。 (鈴木学)

◇効率化

 「ウー」。重低音のうなり声が響く。

 かすみがうら市の人家から百メートルほど離れた山中。わなのおりの中で助走をつけて威嚇する体長約八十センチのイノシシを横目に、県猟友会石岡支部千代田部会長の小山昌利さん(58)は言う。

 「行政に固定と移動式のわなのおりを三十個作ってもらった。十人ほどの小さな捕獲隊だから、効率よく捕まえられるように」

 ペアを組む畑井慎悟さん(68)が、処分するため、手にしたのは銃ではなく電気やり。銃のような音は出ない。「人家はないんだけどね」と言いながら、おりに向かった。

 県によると、農作物被害額は右肩上がりで二〇一五年度までの五年は六千万−八千万円台で推移していたが、一六年度に一億円を突破した。稲が約六割を占め、イモ類、野菜、果樹と続く。つくば市では今年一月、自転車専用道で体長約一メートルのイノシシに男女が襲われ、重軽傷を負った。

◇足かせ

 捕獲のため頼りにされる猟友会だが、近年、県内の会員は減少傾向。一万八千人を超えた時代もあったが、一七年度で二千五百五十四人にまで減った。

 免許を取る講習や試験、登録などお金と時間が必要な上、けがの危険もある。銃所持を家族が嫌がることや、銃声で苦情が来ることなども銃離れの要因という。銃の免許を取っても殺処分に抵抗感があり、捕獲活動に加わらない人もいる。

 「新しく銃免許を取る人以上にベテランが辞めていく。三年に一度の狩猟免許の更新のタイミングで辞める人が多いが、今年は大量更新の年。どうなるか」。県猟友会理事の清水昂(あきら)さん(74)は危機感を口にする。

 高齢化も課題で、会員の平均年齢は六十五歳(一七年度)。清水さんは「五年後には、捕獲隊の編成が難しくなるところが出るかもしれない」と推測する。

◇利用は

 かすみがうら市では、処分一頭につき一万二千円の報償金が出る。ただ、一頭六十キロにもなれば、運ぶのは大仕事。わな一つ作るのにも数千円かかる。焼却処分も、解体しないと引き取ってもらえない。

 小山さんは「わなの見回りや補修もある。時間や手間を考えたら、割に合わない。処分はかわいそうだけど、誰かがやらないと。せめて、食肉に回すなどで有効に利用してやれればいいんだけど」と話す。

 ただ、肉の出荷もままならない。東京電力福島第一原発事故による放射能の影響で、石岡市の加工施設が出荷する規制値以下の肉を除き、出荷が制限されている。九割以上は焼却処分されているという。

 県内のイノシシ数は一五年度、約三万二千頭とする推計値もある。この場合、年間六千頭ずつ捕獲しても十年後には約八万三千頭に増えるとされる。「ここ数年が捕獲の正念場」。猟友会員からはそんな声も聞かれる。

 

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