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【茨城】

<風化させない>(上)つくば・茗渓学園でディベート授業 「原発」考えるきっかけに

住民投票の実施に反対の立場で意見を述べる生徒(右)=つくば市の茗渓学園で

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 多くの人たちの日常を奪った東京電力福島第一原発事故が発生して、間もなく七年になる。時とともに事故の記憶が薄れる中、二度と繰り返さないために「風化させない」取り組みや、原発に頼らない街づくりを目指す人たちがいる。一方で、原発推進派からは、事故前に揺り戻すような動きもある。現場を追った。

 東海村の日本原子力発電東海第二原発の再稼働の是非について、住民投票を実施すべきか、否か。

 つくば市の私立校・茗渓学園で先月下旬、高校一年の生徒四十三人が「実施派」と「否定派」にくじ引きで分かれて、ディベート(討論)した。

 「原発事故が起きれば被害が大きく、住民の声を聞かないのはおかしい」「そこまで、お金をかけてやる必要はなく、他の調査方法もある」などと白熱の論戦が展開された。

 この授業を企画したのが、前嶋匠教諭(35)。東日本大震災の被災地でもある仙台市出身で、原発事故が忘れられている現状に、危機感を覚えているからだ。「七年がたち、生徒たちの話題にも上らなくなった」と話す。

 茗渓では高校在学中、生徒全員が論文を一年かけて作成する。事故直後には、自主避難者など事故関連を取り上げる生徒は多かったが、今はほとんどいない。福島から県内に避難する人は三千四百人余りの全国二位で、つくば市内にも多くの人が住み、身近なはずだが、関心は薄れている。

 ディベートの前提知識として、生徒は原発事故の危険性や東海第二を取り巻く状況、電力会社が主張する原発のメリットなども学んだ。再稼働の是非も聞き、出席した三十八人のうち「反対」が二十八人と多数で、「どちらとも言えない」が七人、「賛成」が三人だった。

 ただ、再稼働の是非は、あえてテーマにしなかった。前嶋教諭は「民主主義で大事なのは、結果ではなく手続き。原発という大きな問題を住民の立場から自分の問題として捉え、関心を持ってほしい」と意図を説明。住民投票の是非を論じることで、「原発」についても自然と考えるようになることを期待した。

 ディベートの結果、住民投票否定派が過半数を占めた。投票に費用がかかることを挙げ「福祉に充てた方がよい」「原発問題を住民に考えさせるのは難しい」といった声が続いた。

 出席した山田真さん(16)は、最初から実施派。しかし、授業では否定派の立場で参加したことで「実施派のデメリットも見えた。双方の意見が分かった」と話した。

 一九九六年に、原発の建設是非を問う全国初の住民投票を実施した新潟県の旧巻町(新潟市西蒲区)で当時の町長だった笹口孝明さん(69)はこう言う。

 「町で住民投票をすることになってから、住民は核のごみ問題なども含め、原発について非常に勉強して考えた。生徒も、授業をきっかけに、事故を忘れることなく、継続して考えていってほしい。議論することが、事故を繰り返さないことにつながるはずだ」 (山下葉月)

 

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