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【茨城】

<ひと物語>霞ケ浦と地域つなぐ 「霞ケ浦市民協会」研究アドバイザー・沼沢篤さん

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 「研究学園都市や鹿島臨海コンビナートなど、この地域は霞ケ浦があって成り立っている。それなのに、総合的で体系的な霞ケ浦の資料はなく、地元の意識も低かった」

 霞ケ浦の環境悪化が問題になり、民間研究所の構想が浮上した約三十年前、生物学の研究者として声をかけられた。一九八九年、福島県職員を辞めて土浦市に移り住んだ。

 小さな民間研究所の「霞ケ浦情報センター」は、市内の建築事務所の一角が拠点。机一つ、本棚一つで研究を始めた。当初は行政などに煙たがられ、十分な収入もなかった。貯金を切り崩す生活が続き、七年後に底をついた。

 「定職があって合間にやるならいいが、専従の市民活動で環境問題に取り組むのは本当に大変」。それでも、やめようと思ったり、後悔したりしたことはないという。

 「霞ケ浦は巨大な対象。自然環境と人間の共生について、着地点と方向性を見いだしたい。それには自然科学だけでなく、人文科学も歴史文化も知らなければいけない。難しいテーマに取り組んでいるから、ファイトがわく」と語る。

 九五年、つくば、土浦両市が第六回世界湖沼会議の会場になった。研究者や行政、市民が世界の湖沼の環境問題を協議し、多くのイベントも開かれた。

 翌年、霞ケ浦情報センターなどを前身に、社団法人の霞ケ浦市民協会が発足。二〇〇五年には県の研究拠点として、土浦市内に霞ケ浦環境科学センターが開設された。

 「霞ケ浦は地域の宝という認識が出てきた。科学技術や政策だけでは、霞ケ浦はよみがえらない。自分たちのものという認識が必要」と訴える。市民の愛着につなげようと、県霞ケ浦環境科学センターで、子どもたちの体験学習の指導をしている。

 隔年で世界各地で開かれる世界湖沼会議には、ほぼ毎回出席している。タイやフィリピンの湖に、自費で視察に訪れたこともある。

 今年十月、つくば、土浦両市で再び十七回目の世界湖沼会議が開かれる。「市民には受け身ではなく、積極的に参加してほしい。役所や研究者任せにせず、霞ケ浦を自分の問題と考える転換点になってほしい」と願っている。 (宮本隆康)

<ぬまざわ・あつし> 山形県新庄市出身。山形大学、千葉大大学院、東大大学院などで生物学を学んで理学博士に。製薬会社、福島県の自然公園にも勤務した。「霞ケ浦考現学入門」などの著書も出版している。土浦市在住。

 

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