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【茨城】

子牛不足を分業化で解消へ 大子町に繁殖支援施設オープン

取り組みを説明する益子さん=大子町で

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 県のブランド和牛「常陸牛」の素牛(子牛)の産地・大子町で、繁殖支援施設の「だいごランチ」がオープンした。繁殖農家から母牛を預かり、種付け・妊娠を請け負う県内初めての施設。農家の高齢化が進む中、分業化することで、労力軽減や規模拡大を図る試み。深刻な子牛不足による価格高騰の解消にも期待がかかる。 (鈴木学)

 運営するのは、和牛繁殖を通じ地元の農業活性化に取り組む団体「大子町アグリネットワーク」で、牛の飼育と受託を主業務にしている。

 県の調べで、和牛の母牛である繁殖雌牛の町の頭数は、県全体の約二割を占める。繁殖農家は約百四十戸(二〇一六年)あるが、八割が十頭未満の小規模。高齢化による廃業もあり、将来が不安視されている。

 「キャトル・ブリーディング・ステーション(CBS)だいごランチ」と名付けられた施設では、出産後十五日ほどの母牛を二カ月半〜三カ月半預かり、種付けし妊娠させる。繁殖農家は預ける費用はかかるが、その間は子牛の飼育に専念できる。

 妊娠後は施設に隣接する町営牧場「大子ふれあい牧場」に預けることができ、出産三十日前に農家に戻される。農家の飼育は出産前後四十五日ほどで済むため、労力軽減になる。

 加えて、牛舎が空いた期間に新たな母牛を飼育することも可能で、牛舎の新築や増築をせずに頭数を増やせる仕組みだ。

 だいごランチの約五百平方メートルの木造牛舎には、監視カメラ、発情発見装置があり、堆肥舎や管理施設を備える。国や県の補助金を利用し総事業費は約四千六百万円。一度に五十六頭飼育でき、運営側は年間百七十頭の利用を見込む。

 生まれた牛は約十カ月育てられて、市場に出荷されるが、現在、深刻なのがこの子牛の不足。取引価格は全国的に高騰しており、県内の和子牛市場でも、一一年に一頭約四十万円だった平均価格は、一六年には二倍の約八十万円に。市場から子牛を調達し、約二十カ月かけて育てる肥育農家の経営を圧迫している。

 母牛が増えれば子牛も増えるとして、県は繁殖雌牛を一五年の三千二十頭から、二五年に四千頭にする計画を立てている。母牛導入に補助金を出し、CBSもこの一環という。乳用雌牛に受精卵を移植して借り腹による和牛子牛の出産などにも取り組んでいる。

 開所式が十日にあり、綿引久男町長は、一六年に五百六頭だった町市場での子牛取引頭数を「一千頭を目指す意欲でやってほしい」と期待を寄せた。

◆運営するアグリネットワーク・益子光洋社長「攻める農業で増頭を」

 CBS建設の話し合いを始めて足かけ三年。大子町アグリネットワークの益子光洋社長(45)は「ようやくスタート地点。攻める農業で(牛を)増頭していく」と意気込む。

 実家は農家で、二十歳で専業農家になったという。繁殖和牛の飼育や林業、ソバづくりなど複合的に取り組んでいる。

 東日本大震災が発生した二〇一一年につくったのがアグリネットワーク。そのころから「このままでは町の牛は減り続ける」との危機感は強くなった。「打開策は増頭しかない」と研修を重ねて、母牛を預かり繁殖を支援する取り組みにたどりついた。

 生後三日ほどで子どもを早期離乳させると、母牛の妊娠準備は早まるという。自身もこの方法で出産間隔を短くし、放牧で労力軽減を図るなどして、三年ほどで牛を二十五頭から四十五頭に増やした。ただ、町の農家では、母子の牛はしばらく一緒に飼うのが一般的で、理解してもらうため奮闘中だという。

 増頭は「だいごランチ」だけでは難しい。ランチは大牧場の意味で、町全体を広大な牧場に見立てて耕作放棄地なども有効活用し、みんなで協力して増頭していこうとの願いを込めて付けた。「この取り組みをさらに広めていきたい」と力を込める。 (鈴木学)

 

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