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【茨城】

東海第二再稼働 「住民意向の反映重要」 首長懇 生みの親・村上前村長がみた新協定

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 東海村の日本原子力発電(原電)東海第二原発を巡り、三十キロ圏の水戸など六市村は三月末、再稼働の際の事前了解を盛り込んだ新協定を原電と結んだ。原電との交渉は、六市村で構成する原子力所在地域首長懇談会(首長懇)で担った。この枠組みを二〇一二年につくった前村長の村上達也さん(75)は「住民の意向のくみ取りが重要になる」と説く。 (越田普之)

 首長懇の設置は、退任した村上さんの「置き土産」とされる。原発が立地する自治体が、事前了解権を三十キロ圏の自治体にも広げるよう求めるのは、全国でも異例だった。東京電力福島第一原発事故の被害が広範囲に及んだことを踏まえ「立地自治体が、権限を独り占めするのは正義ではない。村から発議しなければと思っていた」と語る。

 交渉は一二年七月にスタートし五年半かけ、協定の合意に至った。後任の山田修村長が交渉リーダーとして首長懇を引っ張った。「六市村長が粘り強く頑張った。私が村長を辞めた後、交渉がどうなるか心配もあったが、山田村長が筋を通してくれた」と評価した。

 協定では「原電は再稼働の際、事前協議により、実質的に六市村の事前了解を得る仕組みとする」と規定。六市村が協議し一つの答えを出すとし、一自治体でも「ノー」と言えば、再稼働できないようにした。

 ただ、「実質的な事前了解」と、文言にあいまいさを残した。一部からは協定を合意せず、交渉を続けるべきだとの声もあるが、村上さんは「電力業界で立場の弱い原電としては、この回答がぎりぎりだろう。『事前了解』という言葉が入ったんだから、これできっちり対応することだ」と指摘した。

 今後について「六市村それぞれが、住民の意向をくみ取ることが大事になってくる。(協定を)どう使うかは、首長の力量だ」と対応を注目する。

 三十キロ圏自治体にも再稼働の事前了解を取る「東海第二方式」は、他の原発立地地域にどう影響するか。「立地自治体以外の権限を電力会社が初めて認めた。これがベースとなり、よそで、よりよい内容の協定ができるかもしれない」と期待を寄せた。

<むらかみ・たつや> 1943年、石神村(現東海村)生まれ。一橋大を卒業後、常陽銀行に入行。97年に村長選に初当選し4期16年務めた。99年、村内の核燃料加工会社ジェー・シー・オー(JCO)で臨界事故が発生し、対応に追われた。福島第一原発事故後に脱原発の立場を鮮明にし、全国の首長らでつくる「脱原発をめざす首長会議」の世話人を務める。

◆政策決定 どう生かす 6市村で対応ばらばら

 東海第二の再稼働への「拒否権」を手にした三十キロ圏の六市村。首長が是非を判断する材料として重要になるのは住民の声となる。しかし、那珂市を除く五市村は、アンケートや住民投票をしないまま判断する可能性があり、住民の意思が置き去りにされる懸念もある。

 那珂市の海野徹市長は十四日、水戸市内で取材に「具体的な再稼働の話が出たときには、住民投票とか、住民の意見を聞いて反映しなければいけない。行政と議会だけでは決められない」と、再稼働の是非を問う住民投票も視野に入れる。

 海野市長は、脱原発を唱える小泉純一郎元首相の講演会であいさつに立った。那珂市は二〇一六年度の市民アンケートで再稼働について問い、否定的な声が64・8%となっていた。

 一方、他の五市村はアンケートなどによる住民意思の確認には消極的だ。ひたちなか市の本間源基(もとき)市長は「住民投票をやる気はさらさらない。議会に諮りながら判断せざるを得ない」と説明。水戸市の高橋靖市長は、学識関係者や市民でつくる有識者会議の見解を参考にする考え。日立、常陸太田市は「未定」とする。

 東海村の山田修村長は「住民投票は自分の責任放棄だ」とするものの、「村長と村議だけで決めるのは良くない。住民の意見をどう聞くか、悩んでいる」と判断方法を模索する。

 原子力と地域社会の関わりに詳しい茨城大人文社会科学部の渋谷敦司教授(社会学)は、新協定について「首長と議会に再稼働への『同意権』を拡大しただけで、住民の思いが無視される危険性がある。住民意思をくみ取って政策決定に反映していく仕組みが必要」との見方を示した。 (越田普之、山下葉月)

 

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