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【茨城】

「ある町の高い煙突」撮影進む 来春公開予定 高萩でのロケ公開

映画「ある町の高い煙突」の撮影がスタート。小川春樹日立市長(左)の激励を受ける主演の井手麻渡さん(中)と松村克弥監督=高萩市で

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 煙突としてかつて世界一の高さ155.7メートルを誇った日立鉱山の大煙突建設にまつわる実話を元にした映画「ある町の高い煙突」(松村克弥監督)の撮影が、物語の舞台の日立市などで進んでいる。松村監督にとっては、県ゆかりの茨城3部作の最終章にあたり、手応えもみせる。主人公の関根三郎を演じる井手麻渡(あさと)さん(28)は「長く愛される作品にしたい」と意気込んだ。(鈴木学)

 高萩市で七日にあったロケが報道陣に公開された。「必ずあのバケモノ(煙)を退治してみせる」と祖父の墓前で誓う三郎。鉱山から出る煙害で荒廃する畑に、三郎の親戚の悲しみの声がウグイスの声とともに新緑の山に響いた。

 井手さんはオーディションで映画初主演を勝ち取った。「誠実でさわやかで、いい意味で昔かたぎの感があった」と松村監督。三郎を演じるに当たり、モデルとなった関右馬允(うまのじょう)の著作を読み、事前に何度か訪れてその空気に触れ、役作りをしたという。「生命力にあふれる熱い人」とイメージする三郎を演じることで、「自分も一緒に成長していきたい」と語る。

 松村監督は、岡倉天心の実像に迫った「天心」(二〇一三年)、特攻機乗組員を取り上げた「サクラ花−桜花最期の特攻−」(一五年)と本県ゆかりの二作品も撮ってきた。今回、茨城三部作の締めくくりで選んだのが、CSR(企業の社会的責任)の原点ともいわれる大煙突を扱った本作だった。

 本作は、三月末に日立市の満開の桜を撮影しスタート。ドラマ部分撮影二日目のこの日は予報の雨も降らず「地元の人の協力で撮影もスムーズで、三部作の最後を飾るにふさわしい幸先。この先も快調に進むと固く信じました」と話した。

 撮影は県内のほか山形、栃木であり、六月に終了予定。一九九三年に五十四メートルを残し倒壊した大煙突は、一部を作り、往年の威容はCGで表現する。秋の東京国際映画祭への出品を目指し、来春の公開予定。

◆主演の井手麻渡さん 師と共演「一番緊張」

 井手さんは、共演する仲代さん主宰の「無名塾」所属。2009年の入塾ながら、師と劇中で言葉を交わす役は昨年の舞台が初めてだったという。「ガチガチでした」と振り返る初日以上に「一番緊張すると思います」と本作での共演シーンに向けて笑った。

 撮影現場を訪れた日立市の小川春樹市長は「どこから見てもいい男。民衆を率いる関根のイメージにもぴったり」と井手さんに太鼓判。「多分ヒットする。本人を見た瞬間、そう思いました」と持ち上げた。

 <あらすじ> 約百年前、開業した日立鉱山で、鉱山の宿命とも言える煙害が発生、山を枯らし、農作物まで奪っていく。立ち上がったのが地元の若者、関根三郎(井手さん)だった。旧制一高に合格し前途洋々の未来が待っていたが、祖父の兵馬(仲代達矢さん)が煙害による病に倒れ、三郎は煙害に挑むことを誓う。住民との交渉役の社員加屋淳平(渡辺大さん)や、その妹の千穂(小島梨里杏(りりあ)さん)と心を通わせていく三郎。彼らの熱意に、社長の木原吉之助(吉川晃司さん)は巨大煙突を建てる決意をする。

 原作は新田次郎の同名小説。現実にこの問題に取り組んだ関右馬允と鉱山側の角弥太郎をモデルにした三郎と淳平の立場を超えた信頼関係、三郎と千穂の恋などが描かれる。 

 

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