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【茨城】

<ひと物語>個人も宇宙で遊べる 宇宙ベンチャー企業社長・亀田敏弘さん(50)

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 「国際宇宙ステーション(ISS)は地球から約四百キロで、東京から名古屋ぐらいの距離。宇宙は意外に近くて、手が届く。個人でも利用して遊ぶことができる」

 筑波大の准教授をしながら、宇宙ベンチャー企業「ワープスペース」の社長を務める。わずか約十センチ四方の立方体の超小型人工衛星などを通じ、個人レベルの宇宙利用の実現を目指している。

 二〇一〇年、宇宙航空研究開発機構(JAXA)筑波宇宙センターから、超小型衛星の放出計画への参加を打診された。超小型衛星は宇宙に運ばれた後、ロケットやISSから放出される仕組み。衛星開発には無縁だったが、すぐ製作を決めた。

 「私も学生たちも右も左も分からない。頭の中にイメージはあり、できると思ったが、後で甘かったと分かった。それでも、できるかどうかよりも始めるしかない、と思っていた」と振り返る。

 翌年から大学内で開発グループをつくり、延べ約百人の学生たちと三年間取り組んだ。一から学び、試行錯誤しながら完成。一四年、筑波大として初めて放出を実現した。

 二回目の放出に向けて二号機を製作中に、市販の最新機器を利用し、格安でつくれることに着目した。

 宇宙利用は、国などが巨額の予算を費やす印象が強く、一般には縁遠いイメージがある。しかし「巨額の有人宇宙飛行も、教育も、ひとくくりにされている。その状態をぶち壊したかった。車でも、F1と軽自動車が全然違うのと同じ」と語る。

 気象衛星などは数百億円規模の費用だが、超小型衛星なら、千五百万円程度にまで費用が抑えられるとされる。国内では超小型衛星の商業利用はほとんどないが、世界では既に始まっているという。百個以上の観測衛星を飛ばす会社や、遺骨を宇宙に飛ばす「宇宙葬」を事業化している会社もある。

 さらなる低価格の超小型衛星の実用化と量産化、個人の宇宙事業の市場拡大を目的に掲げ、「ワープスペース」をつくば市内で一六年に創業した。子どもでも気軽に宇宙を楽しめるように、気象衛星から画像を受信できる安価な簡易アンテナキットもつくった。

 「超小型衛星を格安にできれば、観測や通信以外の宇宙の利用分野がきっと出てくる。宇宙をきっかけに、多くの人がワクワクし、知的好奇心を高めてくれれば」と願っている。(宮本隆康)

 <かめだ・としひろ> 1968年、神戸市出身。筑波大システム情報系構造エネルギー工学域の准教授。宇宙環境でも耐えられる金属材料などを研究している。東京大、米ノースカロライナ州立大大学院で学び、97年に筑波大に採用された。つくば市在住。

 

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