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【茨城】

<ひと物語>掩蔽の一瞬捉え40年 日立市のアマチュア天文家・冨岡啓行さん(75)

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 天体望遠鏡で捉えていた光り輝く恒星が一瞬だけ視界から消える。恒星の前を小惑星が横切ることで、地球に届く光が遮られたことで起きる「掩蔽(えんぺい)」現象だ。

 この現象を約四十年間追い続け、昨年十二月までに国内最多の六十五回の観測に成功。長期にわたる活動が認められ今年三月、日本天文学会(東京都三鷹市)から「天文功労賞」を受けた。「新しい星を見つけたわけではないので、びっくりしました」と照れる。

 掩蔽は、恒星、小惑星、地球が一直線に並ぶと起きる。恒星や小惑星は、それこそ「星の数」ほどあるため、世界中のどこかで必ず起きると推測できるが「この現象が、観測できる力のある人の頭上で起きるかどうかは、ごくわずかな確率だ」と指摘する。掩蔽現象を捉えるアマチュア観測者は少なく、学会担当者は「国内でも少人数」と言う。

 個人の天文学者や世界的な小惑星の研究システムから、掩蔽の予報が出た時に観測する。成功するのは年に数回で、確率は百分の一。相棒は、超高感度のカメラをつけ、一から作り上げた望遠鏡。天体観測用ドームのある日立市内の自宅で、その瞬間を待つ。

 望遠鏡の視野に、対象の恒星を入れるだけでも一時間かかる。明るい星を頼りに、「経験で探すしかない」と言う。このため、成功した時の「やったー!」という気持ちは、何にも代え難い。

 日立市出身。物心ついた時から空を見上げ、星を追いかけた。掩蔽との出会いは高校時代。望遠鏡で月を見ていると、近くの恒星が一瞬、消えた。「突然ぱっと消えたり、出てきたり。面白くてこの掩蔽の世界に飛び込みました」

 ただ、継続する一番の理由は「お金がかからず、誰かの役に立つことができるから」。観測データは、国内外の研究者や天文台に送られる。データによって、小惑星の大きさや特徴などが判明したが、具体的に何の研究に使われているかはあまり関心はない。「あくまで私は観測屋。誰かの役に立っているならそれでいいんです」

 今年に入っても新たに二回、成功した。目標は次のステージに入り、冥王星のさらに遠くにある「外縁天体」の掩蔽現象を観測することになった。「それが終わったら引退しようかな」。世界でも成功例が一、二例しかない。遠き宇宙への思いは衰えず、熱く燃えている。 (山下葉月)

<とみおか・ひろゆき> 1942年9月、日立市生まれ。「空好き」の気持ちが抑えきれず、日立一高に通いながら、市の天気相談所で天気図づくりを学んだ。卒業後には相談所に入所し、定年退職まで、気象予報士として天気図づくりや気象観測にいそしみ、所長などを歴任した。

 

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