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【茨城】

<ひと物語>怒りの抑え方広める 筑波大准教授の心理学者・湯川進太郎さん(46)

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 人間の攻撃性や怒りを研究する心理学者だが、子どもの時には短気で怒りっぽかった。「かんしゃく持ちで、けんかばかり。なぜ人は腹が立つんだろう、と思ったのが研究のきっかけになった」

 「怒りには、自分の権利を脅かされた、などの侵害感がある」と指摘する。原因はいくつも存在し、研究しても、きりがないと感じた。原因よりも、怒りを抑えることに興味がわいた。

 当初は、自分の感情を書く「筆記開示」という方法を研究した。怒りが頭の中を堂々巡りしていたり、思い出したりする場合に効果的。言葉にして書くと、感情を見つめて整理することになり、怒りが減ったり再燃しなくなるとされる。

 「普通、怒りはそれほど長く覚えていない。一、二週間後も怒っていたら、筆記開示をした方がいい。怒ったその日に書いても罵詈(ばり)雑言になりがちなので、少し収まってから書くのがいい」と勧める。

 約十年前からは、仏教の影響を受けた瞑想(めいそう)の一種「マインドフルネス」の研究に取り組む。呼吸に意識を集め、リラックスしたり、集中力を向上させるのが一般的な方法。近年、精神医学や神経科学の側面からも研究が進む。うつ病治療の効果なども報告される。

 「マインドフルネスは、怒りなどの感情から少し距離を置き、感情にとらわれている自分に気付くための技術。心で心を制御するのは難しい。心と体はつながっていて、怒りは身体的側面が強いので、身体を使って制御する発想」と説明する。

 瞑想には慣れが必要だが「腹が立った時は、呼吸が荒くなる。瞑想ができなくても、ゆっくり大きく呼吸するだけで、怒りを鎮める効果がある」という。

 現代の日本では、権利意識の高まりなどを理由に、侵害感を感じ、怒りっぽい人が増えていると感じる。頻発するインターネットの炎上騒ぎは「匿名性によって人間の攻撃性は高まるため」とみている。

 「怒りは侵害感に対する自然な感情。抑え込む必要はなく、付き合い方が大事」と指摘する。瞑想方法を知ってもらおうと、解説する本も出版している。研究だけでなく、怒りをコントロールする実践方法の発信に、関心が強まっているという。

 「今でも、しょっちゅうカッとなりますよ。だいたい心理学者は、自分に問題があることを研究しようと思うんでしょう。でも、もう怒りっぱなしになることはない」と笑う。 (宮本隆康)

<ゆかわ・しんたろう> 1971年生まれ。名古屋市内の高校と、早稲田大学文学部を卒業後、筑波大学大学院へ。現在、筑波大人間系心理学域の准教授を務める。空手の有段者で「実践 武術瞑想(めいそう)」などの著書がある。千葉県柏市在住。

 

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