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【茨城】

<ひと物語> 県フィルムコミッション推進室嘱託職員・谷田部智章さん(45)

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 「映像になった時の情景を想像しながらロケ地を提案できるのは、茨城では自分が一番だと思っています」。県内のロケ地の知識は誰にも負けないという自信が表情にみてとれる。

 二〇〇二年十月に設立された県フィルムコミッション推進室で、映画やドラマの制作側とロケ地をつなぐ役割を担う。制作者からの問い合わせは急ぎの場合が多く、受け答えは即座で、明快にすることを心がける。これが、ロケ地に選ばれる一つのポイントかもしれない。

 ジャッキー・チェンに魅了され、十代前半から映画ファン。〇三年の映画「バトル・ロワイアル2(ローマ数字の2)鎮魂歌」の鹿嶋ロケで初めてエキストラに参加した。水戸出身で、敬愛する深作欣二監督が手掛けた作品。死去により息子の健太監督が後を引き継いだが、深作組に参加できる喜びにあふれていた。

 その後、エキストラをやりながら現場を手伝うようにもなった。「夜のピクニック」(〇六年公開)でエキストラの手配・受付を担当し、初めてクレジットに名前が載った。「桜田門外ノ変」(一〇年公開)では、撮影場所を探すロケハンの仕事で県内くまなく回った。脚本を映像にするにはどのような場所がいいのかを学び、現在の仕事の原点になった。

 ロケでは突発的な問題も起こる。申請を受け、はんこをもらってという手続きを踏む通常のお役所仕事とは違い、瞬時の対応力が問われることがままある。

 ある時、制作側から急な雨降らしの要望が出た。消防車は手配していたが、水道から水をくむ場所で、急いで水をくみ上げるには水圧が足りない。水圧を上げれば、周辺の家の水が濁る可能性があった。

 どうすれば撮影できるのか模索し、消防署の協力を得て消防車を増やすことで対応した。時には制作側とギャラリーとの間に立つ。バランスを取り、全体が良い方向に向くように調整するのも大事な仕事だ。「しんどいことも多いですよ」と苦笑いが浮かぶ。

 そうしてできた作品への思い入れは、やはりひとしお。若手俳優が起用される仮面ライダーシリーズや戦隊シリーズを担当することが多く、仮面ライダードライブを演じた竹内涼真さんをはじめ、茨城ロケを経験し、人気者になっていく姿はうれしいという。

 全国トップクラスのロケ数を誇る本県。都道府県の魅力度ランキングは最下位なのに、撮影する側には魅力がある。「どうすれば、一般的な魅力にできるのかを今後は考えないといけないかもしれない。茨城が好き、映画が好きで、それが仕事になっている。県庁の中で、一番楽しく仕事をしている自信はあります」と話す。(鈴木学)

<やたべ・ともあき> 1973年2月生まれ、水戸市出身。高校卒業後、映画館や郵便局などの勤務を経て2014年に県の嘱託職員に。年に数回、深作欣二監督に関する講座を開くほど深作研究に傾倒する。骨っぽい水戸っぽの精神もあり、何かにあらがうのが深作作品の特徴という。

 

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