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【茨城】

<点検 避難計画>30キロ圏脱出、試算着手 県「複合災害」想定せず

東京電力福島第一原発事故で、避難する車両で渋滞する道路=2011年3月12日、福島県浪江町で

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 東海村の日本原子力発電東海第二原発の三十キロ圏に住む九十六万人が、圏外に脱出するのに二日半以上−。

 そんな衝撃的なシミュレーション(試算)を示したのが、交通問題を研究してきた環境経済研究所(東京)の上岡直見代表(法政大非常勤講師)。二〇一六年に、地震との複合災害で主要道路の5%が損壊して不通になり、大渋滞が発生することを想定し、三十キロ圏を出るのに「六十四時間四十分以上」と推定した。

 上岡代表は「東海第二の周辺は人口が多い一方で、道路は限られる。交通渋滞で、避難は他原発より難航する」と懸念する。

 福島県によると、東京電力福島第一原発事故では、1号機で格納容器が壊れるのを防ぐため汚染蒸気を外部に逃がすベント(排出)をした五時間後に、原発から約六キロのモニタリングポストで毎時一・五九ミリシーベルトを観測。これは、一般人の年間被ばく線量限度一ミリシーベルトをわずか一時間で超える高さだった。

 東海第二で事故が起きれば、渋滞で逃げられない多くの人が、強い放射線にさらされる可能性がある。

 これまでに、避難を主導する県が試算したのは、五キロ圏内の約八万人分だけだ。一五年度に試算し、住民の九割が圏外に出られるのは、東海村が一四・五時間。これは、交通規制が有効に機能した場合に限られ、最悪では二十九時間に延びるとした。

 ただ、県の試算は地震や津波などの複合災害を想定しない。上岡代表は「東日本大震災では、各地で橋が損傷し、道路が通行止めになった。県の試算には現実味がない」と批判する。

 県は昨年度から、三十キロ圏住民の圏外に出る時間の試算にも着手。県原子力安全対策課は「前提条件の調整などで、公表にはまだ時間がかかる」と説明。それでも、複合災害は織り込まない予定で、圏外を脱出し避難所までたどり着けるのが、どれほどになるかは見通せない。

 原子力規制委員会の指針によれば、事故時は原則的に、五キロ圏は即時避難、三十キロ圏はまず屋内退避し、順に避難する。渋滞が起きないようにするのが目的で、課は「九十六万人が一度に避難するわけではない」と強調する。

 とはいえ、深刻な事故になれば、屋内退避を求めても、避難を開始する人は少なくないはずで、混乱する可能性は高い。

 東海村の山田修村長も「多くの首長が『人はそんなに冷静に動けない』と考えている。(人口の多さという)この地域の特殊性が、どこまで伝わっているのか」と訴えていた。 (酒井健、山下葉月)

 

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