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【茨城】

「人口密集地なのに…」 東海第二延長容認 30キロ圏に96万人

東海第二の再稼働に反対する乾康代教授=水戸市で

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 日本原子力発電(原電)東海第二原発(東海村)について原子力規制委員会が7日、運転延長を認めた。東海第二が運転を始めた当時、国の指針は、人口密集地への原発立地を避けるよう求めていた。指針は規制の基礎だったはずなのに死文化。運転開始から40年で周囲が人口密集地となったが、延長が認められた。原電元幹部や識者は「不当だ」などと、原点を忘れて再稼働に突き進む姿勢を疑問視する。(越田普之)

◆歯止め

 「建設当時、村内は農地と原子力関係の敷地が多い印象だったが、今は大型スーパーもできて、すっかり住宅地になった。芋畑の中の道を歩いて出勤していた頃、ここまでの状況は想像できなかった」

 東海第二の建設当初を知る原電の元幹部は、環境の変化を振り返る。

 原発の立地は、一九六四年に制定された「原子炉立地審査指針」に基づいて判断されてきた。指針では、事故が起きた際の住民の被ばく防止を目的に、立地の条件を「人口密集地帯からある距離だけ離れていること」などと定めていた。

住宅が密集する先に、東海第二原発(左)と廃炉中の東海原発が見える=東海村で

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 全域が原発五キロ圏内の東海村では、指針ができる前の六〇年、日本初の商用原発だった東海原発が着工。当時の村民は約一万四千人だった。「2号機」に当たる東海第二の建設が始まる三年前の七〇年には、約一万九千人に増えていた。

 だが、指針が原発と人口密集地の距離を具体的な数値で定めていなかったことから、東海第二は運転を始め、村の人口も四十年で約三万八千人にまで膨れ上がった。原電元幹部は「原発周辺を住宅街が取り囲む現状は、指針の趣旨を逸脱している」と指摘した。

◆骨抜き

 原子力規制委員会は、福島の原発事故後にできた新規制基準について「放射性物質の閉じ込めに重点を置いており、放出を想定した指針の考え方は取り除いた」と説明。指針が死文化したとの認識を示す。現状では、人口密集地と原発との距離に決まりはない。

 著書「原発都市」(幻冬舎ルネッサンス新書)で、この問題を取り上げた茨城大の乾康代教授(住環境計画)は「指針はあらゆる規制の基礎で、軽く扱われてはならなかったのに、半世紀にわたって骨抜きにされてきた。指針を新基準から外したのは不当だと厳しく指摘したい」と強調する。

 東海第二から三十キロ圏の人口は九十六万人と、日本の原発立地地域では最も多い。「人口密集地帯がこれほど接近している原発は、世界的に見ても、ここだけではないか」と乾教授。そしてこう説く。「指針を厳格に運用すれば日本に原発を建設できる場所はない。せめて、東海第二の再稼働を認めるべきではない」

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◆知事、6市村長ら語る

 再稼働の事前同意が必要な知事と6市村長、原電のコメントは次の通り。

<大井川和彦知事> 安全性に関する国の評価が一応示されたと受け止めるが、国や原電には内容を県民に理解してもらう努力を払ってもらいたい。県も独自の原子力安全対策委員会で審査を粛々と続けていく。

<東海村の山田修村長> 原電から設備・運用両面での安全性向上や住民への説明に努める意向が示され、真摯(しんし)な対応を求めた。避難の実効性確保など課題が顕在化し、住民も高い関心を持っていると認識しており、誠実、慎重な対応に努める。

<水戸市の高橋靖市長> 再稼働について原電の意思を確認したい。ただ、実効性ある避難計画の策定や、市民や有識者でつくる会議など一連の作業が終わらない限り、再稼働への同意はあり得ない。市民感情もくみ取りたいが、その方法は全ての選択肢を排除せずに持っておきたい。

<那珂市の海野徹市長> 原子炉が40年を迎え、老朽といっても過言ではない。過酷事故が起きた場合、一刻も早く避難することは極めて困難。市民の命を守る職務のある私として極めて大きな危機感を抱いている。再稼働阻止のため取り組んでいく。

<ひたちなか市の本間源基市長> 原電と6市村で結んだ協定に基づき、とことん協議して、安全対策や避難問題に取り組むことが筋だ。

<日立市の小川春樹市長> 新たな局面を迎えたと認識している。市議会との協議や市民、関係機関・団体などからの意見や助言を踏まえて対応していく。

<常陸太田市の大久保太一市長> 原電とは協定に基づき協議が進められるものと認識している。市民から意見を聞きながら、安心・安全を第一に対応したい。

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<原電東海事業本部長の剱田(けんだ)裕史常務> 許認可の結果を具体的に反映させ、設備と運用の両面について安全性を向上させ、地域の皆さまに説明していく。新たな協定の運用については、まず6市村の皆さまにご説明したい。

<解説>劣化、被災 潜むリスク

 原発の運転期間を原則四十年とするルールは、福島第一原発事故後、民主党政権が導入した。運転延長は「例外中の例外」(当時の細野豪志原発担当相)と強調されていた。しかし、原子力規制委員会は東海第二を含め、三原発四基の運転延長を認めた。ルールの形骸化がさらに進んだ。

 福島事故後、新規制基準や四十年ルールができ、福島の原発を除き七原発十基の廃炉が決まった。いずれも出力が小さかったり、対策工事に巨額の費用がかかったりするためで、電力会社の都合で廃炉の道を選んだ。

 東海第二のような「老朽原発」では、分厚い鋼鉄製の原子炉圧力容器でさえ、強い放射線に長年さらされ、もろくなる。急な温度変化についていけず、割れる危険性も指摘されている。

 しかも、東海第二は東日本大震災で被災した。外部電源を失い、津波で非常用ディーゼル発電機の一部も使えなくなった。何度も強い揺れに襲われており、点検では見つけられない機器の劣化が懸念される。

 福島第一の1号機は、あと二週間で運転から四十年という時に、事故を起こした。地元では事故前から廃炉を求める声があったが、運転を続けた末に最悪の事態が起きた。その経験を忘れてはいけない。(越田普之)

 

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