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【神奈川】

県、やまゆり園建て替えでヒアリング 150人規模維持に疑問

ヒアリングにあたり、県の説明を聞く参加者ら=横浜市神奈川区で

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 相模原市緑区の県立知的障害者施設「津久井やまゆり園」での殺傷事件を受けた施設の建て替え方針について、県は十日、有識者や障害者団体を対象にしたヒアリングを横浜市神奈川区のかながわ県民センターで行った。県が掲げる「ともに生きる社会の実現を目指す」との理念には評価があった一方、定員百五十人の現施設規模での建て替えには、疑問が相次いだ。入所には本人の意向をできる限り聞くことなどの要望も多く出た。 (原昌志)

 「将来を見据えて知的障害者の自立生活をどう考えるか。入所施設そのものを否定しないが、地域で暮らしたい人が暮らせない現状をどう考えるか。大規模施設を再建することそのものを深く議論してほしい」。明治学院大の茨木尚子教授はこう語り、大規模入所施設への問題を提起した。障害者福祉は、地域生活への移行が流れとなっている。その中で県が新施設を、現在の入所者を基に百三十〜百五十人規模を想定していることに、再考を促した。

 国際医療福祉大大学院の大熊由紀子教授も「時代錯誤。世界の流れに完全に遅れている」と指摘。六十億〜八十億円とされる建設費には「一億円あればとてもいいグループホームができる。八十億円なら八十カ所できる。一カ所五人として四百人が支援を受けられる」と訴えた。

 両教授はさらに、入所する障害者本人の意思を尊重する重要性に言及した。県手をつなぐ育成会の依田雍子会長も「家族の意向が本人の意思とは限らない」と話し、意思疎通が難しい入所者に対しても「意思を聞く気持ちを持つことが大事だ」と、丁寧な意向確認を要望した。

 安全体制の面では、事件が元職員の植松聖(さとし)容疑者によって起こされた点に、別の団体代表から「職員の悩みを聞く態勢や外部研修が大事だ」との声があった。

 また植松容疑者が障害者に差別的な考えを持っていたとされることに関連し、障害者と健常者が子どものころからともに学ぶ教育を求める意見もあった。

 ヒアリングは県内二十七団体の代表と大学教授ら十三人の有識者が、三会場に分かれ約二時間にわたって順次、意見を表明した。質疑はなかった。傍聴を含めて八十九人が参加した。

 終了後、県の小島誉寿(たかとし)福祉部長は報道陣の取材に「今までと同じ規模でやるか結論は出していない。意見を踏まえた上で、検討したい」とし、「施設よりも在宅で、という大きな流れがある。新施設も地域移行が円滑に進むようなしつらえにしたい」と話した。

 県は、建て替えについて六日に「考え方」を公表。正面入り口周辺の塀を撤去して一般に開かれた施設にすることや、個室化で生活環境を向上させることなどを掲げた。今後、県社会福祉審議会の意見を聞くなどし、三月に「園再生基本構想」を策定する。

 

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