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【神奈川】

小学生対象の障害児教育 突出した能力発掘へ

◆横浜市教委 10月から指導開始

 横浜市教育委員会は、発達障害などで障害の度合いに応じて通う通級指導教室や個別支援学級の小学生から、特定分野に突出した能力がある児童を選抜して才能を伸ばしたり、能力の発揮を手助けしたりする特別教育事業を始める。四月から対象となる児童十人ほどの保護者に声をかけ、十月から指導を始める。 (志村彰太)

 市教委などによると、自閉症やアスペルガー症候群などの発達障害や知的障害のある人は、計算や記憶など特定の分野に卓越した能力を発揮する場合がある。ただ、現状の市教委の取り組みは、学校生活で感じる困難を克服するための教育や支援にとどまっていた。

 近年、こうした子どもの才能を引き伸ばす教育が全国的に広がり、二〇一四年から東京大先端科学技術研究センター(先端研、東京都目黒区)と日本財団(港区)が「異才発掘プロジェクト(ROCKET)」を開始。市はこのプロジェクトを参考にする。

 市教委職員や学校教員の推薦で児童を選抜。保土ケ谷区の特別支援教育総合センターに週一回、通ってもらい、得意分野に絞った教育や、自分の能力を発揮するために必要な考え方や振る舞いを教える。教員が児童の最寄りの小学校に出向くことや、外部指導者を呼ぶことも検討している。

 市教委の担当者は「試行錯誤が多いと思うが、一年間やってみて成果発表の機会を設けたい」と話した。 

異才発掘プロジェクトの生徒たちを指導する中邑教授(中)=東京都目黒区で

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◆社会で必要な「下地」学ぶ 先端研などのプロジェクト

 先端研と日本財団が展開する「異才発掘プロジェクト(ROCKET)」は今年で四年目で、子どもに自身の弱点をはっきり自覚させながら、得意分野を発揮するために社会で必要となる「下地」を教えている。

 二月中旬、全国各地から選抜された中二〜高一の七人が先端研に集まり、プロジェクト代表の中邑賢龍(なかむらけんりゅう)教授(人間支援工学)の教えを受けていた。生徒たちは事前に、モデルハウス内の壁を塗る作業をしており、今回の課題は自分たちが使ったペンキやテープの量から、かかった費用を推計することだった。

 「二万円」「四十四万円」−。スタッフらがペンキ一缶の値段などヒントを与えるが、生徒たちの答えはバラバラ。中邑教授は「君たちはこういう計算が得意じゃない。社会で生きていく上で、間違った請求書を書いたら大変。情報を聞き取ってメモする力も必要だ」と諭した。中には大学レベルの数学ができる生徒もいるが、現実世界の計算となると途端に苦手になる子もいるという。

 プロジェクトは「異才発掘」と言っても、得意分野を集中的に教える「英才教育」ではない。中邑教授は「うちで教えるのは、画一的な評価軸の世の中に負けるな、ということ。それから多様な評価軸を示して、自分の能力を肯定し好きなことをとことんやれる道筋をつくる」と狙いを語る。

 これまで、三期生まで計六十人を選抜した。生徒の多くが公教育になじめず、不登校になっているという。プロジェクトは隔月で数日間開く教室と、第一線で活躍する著名人の講義、海外に行くこともある体験型プログラムなどがある。

 二〇一七年度から同様の取り組みを始める横浜市教委は、異才発掘プロジェクトを参考に今後の計画を詰める。市教委の担当者は「できれば中邑教授とも連携したい」と秋波を送る。中邑教授は「公教育で同じ取り組みをやるには限界があると思う。協力できるところがあれば」と話している。 (志村彰太)

 

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