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【神奈川】

「自主避難者」への住宅無償提供打ち切り 「生きる気力失いそう」

住宅無償提供の打ち切りを知らせる通知書を前に、支援の継続を訴える福島県郡山市からの避難者=神奈川県内で

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 東京電力福島第一原発事故で国の避難指示が出ていない地域から避難した「自主避難者」に対し、福島県が行ってきた住宅の無償提供が今月末で打ち切られる。「放射能から娘を守りたい」と同県郡山市から神奈川県内に移り住んだ女性(49)は避難生活の心労から病気を発症。新たな経済負担に「生きる気力を失ってしまいそう」と不安な心境を明かす。東日本大震災発生から十一日で六年−。 (加藤豊大)

 震災の日は、娘が小学校を卒業する直前だった。二人で暮らしていた郡山市の自宅は福島第一原発から西に約六十キロ。テレビでは「原発事故で健康にただちに影響はない」と繰り返し報道された。信じたかったが、「ただちに」の部分がどうしても引っかかり、娘のために避難を決めた。

 四月、神奈川県内の中学校に入学すると、娘はふさぎ込むことが多くなった。クラスになじめていないのは明らかだった。「郡山に帰りたい」「だめ」の押し問答が続く。娘は家を飛び出し、一週間郡山市の祖父の家に泊まったこともあった。母子の関係はこじれた。

 二人が暮らす公務員宿舎は三部屋あるが、築四十年以上のため窓の立て付けが悪く、冬は屋外と変わらないほど寒く感じる。その年の暮れ、女性はぜんそくを患った。

 「寝ていてはいけない、仕事を探さなくては」と考えているうち、うつ病も発症。「自主避難」のため東京電力からの賠償金はわずかしかなく、貯金を切り崩し生活した。寝たきりの状態から復帰するのに一年半かかった。

 アルバイトを三つ掛け持ち、生活をつないでいた昨年の夏、福島県の職員らが突然訪ねてくるようになった。「来年四月以降の住居は決まっていますか」。電話や書面でも「意向調査」が続いた。

 神奈川県内の公務員宿舎に暮らす自主避難者は原則、今月末で退去しなくてはならない。しかし、娘が高校に通っていることや世帯収入を伝えると、四月以降も二年間、居住を延長できる制度が利用できると案内が届いた。ただ、無償だった賃料約一万四千円は全額負担になる。

 「月に連休はほとんどない」という生活に、経済的負担が加わるのは厳しい。だがそれ以上に、「私たちは『好きで避難した人』なのか」。避難区域外からの避難は、認められないと言われているようで悔しかった。

 六年間を振り返り「娘にはつらい思いをさせた」と自分を責めない日はない。

 しかし、避難を続けたことを後悔はしていない。「放射能の影響をどう捉えるかは、人それぞれだと思う。万が一娘の健康に被害が出ることを考えると、娘が自立するまでは神奈川で暮らしたい」

 公務員宿舎の居住延長を申請する際には「契約で定められた期限までに退去します」と書かれた誓約書の提出を求められた。今のままなら、二年後には新たな住居探しを迫られる。

 「私たちは原発事故の被害者です。安心できる暮らしを求める権利があるはず。東京電力や国は責任を果たし、住宅の無償提供を継続してほしい」

 

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