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【神奈川】

人との出会いも醍醐味 川崎「屋台のある本屋 新城劇場」

お薦めの本を紹介し合う読書会の参加者=中原区で

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 武蔵新城駅(川崎市中原区)の北口を出ると、「屋台のある本屋 新城劇場」なる看板が目に飛び込んでくる。屋台? 劇場? 興味津々で、ビルの一階にある店のガラス戸を開けると…。

 たしかに屋台のような四つのスペースに本が並んでいる。記者が訪れた日曜午前、店員二人を含めて十代から五十代までの男女五人が参加し、中央のテーブルで読書会が開かれていた。テーマは「十代に贈りたい本」。持ち込んだ本との出合いやお薦めのポイントを紹介し合った。

 多摩区の介護士原田涼さん(26)は、湯本香樹実さんの小説「夏の庭」を取り上げた。「大人なんてみんな死んじゃえ」と思っていた中学時代、三人の少年が草原に立つ表紙にひかれて購入。何度も読んでぼろぼろになり、これは二冊目という。「心を通わせる人が亡くなって悲しめるのは、うらやましいと思った」と、老人ホームでみとりもする現在の立場もからめて話した。

 「私も読んだことがあり、ストーリーを思い出した」「年代を経て読み直すと違った思いが生まれる」などと感想が挙がった。参加者は、持ち寄ったそれぞれの本にメッセージを添えて寄贈した。

 新城劇場は四月にオープンした。「高校生に向けた本屋」をうたう。劇場が入るビルのオーナー石井秀和さん(41)と、新潟市にあった「ツルハシブックス」の店主西田卓司さんが昨年、知人を介して出会い、意気投合。本との偶然の出合いや人々の交流を後押しするツルハシブックスのコンセプトを受け継いだ店で、西田さんらが選んだ新刊や古書を販売している。

 店員は月額三千円(学生千円)を払い、無給で運営に携わる。八人の店員は今のところ全員女性。店員となることの醍醐味(だいごみ)は、読書会などを通じ、さまざまな人と出会えることだ。一級建築士の星野千絵さんは「サービスを提供して対価をもらうというよりも、参加して場を一緒につくる」と店員の立場を説明する。三月まで看護師として働いていた幸区の加賀屋真希さんは次の進路を探している時にこの場所と出合った。「いろんな生き方をしている大人がいると中高生に思ってもらえれば」

 区内の工房の協力で、屋台作りや室内のペンキ塗りも自分たちで行ったとか。外部の人が本や雑貨を持ち込んで販売などができるよう、屋台の棚の貸し出しも始めるという。

 来月からは、本の寄贈者のメッセージなどを頼りに、参加者が本を選ぶイベント(十九歳以下が対象)が始まる。今月二十一日と二十七日は、そのイベントの場所を店内につくるワークショップが開かれる。

 ガラス越しに興味深そうに店内をのぞきこむ人が後を絶たない。住む人にもそうでない人にも「新城はおもしろい」という意識が広がれば、街の価値は高まる。石井さんはそう考えている。

 <メモ> 営業日や時間は、店員がスケジュールを調整して毎週日曜日に1週間分を決める。週末は読書会や朝食会、自宅に眠っている本を持ち寄る「積ん読の会」などのイベントを催す。棚貸しは、小(25センチ四方)が1カ月500円、大(35センチ四方)同1000円。週間スケジュールやイベントの詳細はフェイスブック(「新城劇場」)で。店員も随時募集中。

 <記者のつぶやき> 店名の「劇場」には「面白いことが起こり、ちょっとした刺激が常にある」という意味を込めたとか。店員には漫画家を目指す若者や、高校時代に放送部に所属し「ここでラジオ番組を始めます」という人も。何かを始めたい人、盛り上げたい人、見守りたい人…。約60平方メートルの小さなスペースは、誰にとってもワクワクする場になりそうな予感がする。

 

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