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【神奈川】

<争点を行く 横浜市長選>(3) 「ハマ弁」と小児医療費

横浜市教育委員会が開いたハマ弁の試食会。味や栄養は好評だったが、利便性への注文が出た=横浜市金沢区で

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 「味はいい。でも、急な仕事が入ったり、子どもが病気で休むこともある。当日対応があれば利用しやすいのに」。横浜市教育委員会が六月中旬、「ハマ弁」をPRするために開いた試食会で参加者の林瑞江さん(44)=金沢区=は感想を漏らした。中学一年の息子がいる林さんはパートで働く。仕事のシフトが遅く決まることもあるという。

 横浜市には中学校給食がない。戦後の人口急増に対応し、校舎建設を優先した結果、給食の実施は後回しになった。共働き世帯の増加で給食実施を求める声が強まり、市教委は昨年度から代わりに配達弁当「ハマ弁」を導入した。だが、七日前までの申し込み、二日前までのキャンセルと不便なため、利用するのは全ての生徒と教員計八千五百人の1・1%にとどまる。

 価格の問題もある。白米、おかず、汁物、牛乳のセットで四百七十円。給食費一食分より百〜二百円高い。林文子市長は六月下旬の記者会見で「ハマ弁を百円程度値下げし、申し込み方法も改善する」と表明した。ただ「家庭弁当を基本とする」という原則を変える方針はなく、価格差など根本的な改善には程遠い。今月十日には、複数の市民団体が市長に、中学校給食の実現を求める約二万六千人分の署名を提出した。

 外部からの転入が多い横浜市は、今も人口増加が続く。だが、人口動態を検証すると、違った様相が見える。三月に発表された人口動態調査で、三十〜四十代は一年間で七百人以上が市外に転出していることが明らかになった。十四歳までの子どもも五百七十人超の転出超過だった。市は二〇一〇年から、この傾向を把握しながら、有効な対策を打てずにいる。

 転出が相次ぐ理由の一つとして考えられるのが「ハマ弁」のように、他自治体に比べて見劣りする子育て・教育施策だ。子育て世代の転出先は、東京都区部、藤沢市、大和市が多い。これらの自治体は給食に加え、小児医療費助成も横浜市より手厚い。

 横浜市は本年度、小児医療費助成を従来の小学三年までから、小学六年までに拡充し、利用者負担は一回の通院で五百円が上限になった(所得制限あり)。これに対し、大和市は所得制限があるものの、中学三年まで全額助成。藤沢市は、所得制限なしで小学六年まで全額助成している。東京二十三区は、都の助成と組み合わせ、少なくとも中学三年まで所得制限なく助成している。

 戸塚区の主婦(34)は昨年度まで、発達障害の小学五年の長男(11)を病院に連れて行く度に五千円以上を負担していた。本年度から助成対象になり、「去年に比べて負担が少なくなったけど、本当なら無料がいいし、中学生にも助成を拡大してほしい」と話す。助成対象外の中学一年の長女(12)も発達障害で、医療費負担は重くのしかかる。

 林市長は、助成拡充を決めた際の記者会見で「小児医療費は、さらに市民の要望に沿っている他自治体もある」と市の制度の不十分さを認めつつ、「財政的には毎年収支不足が続いている」と、さらなる拡充への厳しさを明かした。

 神奈川大の大川千寿准教授(政治過程論)は「有権者は医療や教育など家族を形成していく上での経済的負担がより軽く、便利な場所をシビアに選んでいる可能性がある」と指摘する。

 税収増のための企業誘致も大事だが、住民税を納める子育て世代にも気を配らねば、結局財政は改善せず街は衰退しかねない。「財政制約の中で、横浜の優位性をどう差別化できるか、政治家のリーダーシップと幅広い有権者の声を拾う能力が問われる」と話す。 (志村彰太、梅野光春)

 

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