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【神奈川】

<争点を行く 横浜市長選>(5) 生活保護行政

生活保護の決定通知書を見る戸塚区の男性。住宅扶助は3万円ちょうどだ=横浜市戸塚区で

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 低所得者は自らの意思で引っ越しできないのか。「あんなに家探しに苦労するとは…」。三月まで生活保護を受け、四月から横浜市内の非営利団体に勤める男性(59)=中区=は、簡易宿泊所からアパートに移った時のことを振り返る。

 男性は市内の電機メーカーで働いていた五十歳の時、工場閉鎖に伴い解雇された。すぐに介護関係の仕事に就くも、五年後に倒産し、また無職に。三年前から生活保護を受けて中区の寿地区に住むことになった。

 当時、簡宿に住む人の住宅扶助は月額六万九千八百円が上限だった。それが、横浜市は寿地区の簡宿に住む人たちの住宅扶助を削減し、二〇一五年七月から原則五万二千円までに引き下げた(入居後、半年間は六万八千円)。一泊二千円の簡宿だと月額六万円になり、超えた分は自己負担しなければならなくなった。

 男性は仕事が見つかりそうだったため、簡宿を出て安いアパートを探した。しかし、連帯保証人と緊急連絡先で困った。保証人には民間の保証会社を充て、親族が原則の緊急連絡先は、親しい友人を「妹」とする「裏技」で乗り切った。男性は「困窮する人は、親族と疎遠な場合が多い。親族がいないと家に住めない仕組みは理不尽」と憤る。

 横浜市の生活保護受給者数は一六年度末に七万人と、この十年間で二万人以上増加。市は財政の改善と受給者の自立を促進するため、民間の賃貸住宅への転居を促す。だが、寿地区以外でも引っ越しに課題を抱えるケースが相次ぐ。

 七年前から生活保護を受けている戸塚区の男性(72)は、小高い丘の上にある二階建てのアパートに住む。部屋は立て付けが悪く、すきま風が吹き込み、建物の強度も心配。玄関には高い段差があり、脳梗塞の後遺症がある男性には、外出も一苦労だ。

 さらに、二年前に隣室の住人が相次いで孤独死した。「俺もこうなるかもと不安になった。耐震性もなさそうだし、引っ越したかった」。ただ、転居費用と敷金が払えない。生活保護で敷金などを払う制度もあるが、▽引っ越し先の家賃が現状より安い▽日常的な介護のため転居が必要−などの条件があり、行政が認めると転居できる。

 男性が住む部屋は月額三万円で、これ以上安い所は見つかりそうにない。男性は介護の必要もないため、区役所は転居を認めなかった。「ひがんでいるわけじゃないが、生活保護を受けていると居住の自由がないのかと思った」と、男性は力なく語った。

 市も生活困窮者の居住問題に取り組んではいる。保証人が見つからない人に、保証会社の利用を促す「あんしん入居事業」を十三年前から実施しており、これまでに二千件の利用があったという。ただ、保証会社の利用には、審査がある上に数万円の手数料もかかり、ハードルが高い。

 生活困窮者を支援する寿支援者交流会の高沢幸男事務局長(46)=中区=は「クレジットの滞納歴があれば審査が通らない場合もあるので、行政が信用保証をつける手もある」と指摘。その上で「自立や生活の質の維持のためには、受給者個々の状況にあった生活環境が必要で、行政は丁寧に相談に乗り、対応すべきだ」と話している。 (志村彰太)

 

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