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【神奈川】

<町の資料館 かわさきを歩く> 川崎の海苔づくり資料室(川崎区)

資料を前に「埋め立てがなければ父を継いでノリ作りを続けてたよ」と話す老川さん=川崎区で

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 川崎港にある施設・川崎マリエンは、川崎市民と港の交流を深めることを目的に整備された。川崎マリエンは愛称で、正式名称は、市港湾振興会館。公益社団法人・川崎港振興協会が指定管理者となっている。

 展望室を備えたタワー棟や、川崎港や海運に関する映像が見られるシアター、同港で発見されたホオジロザメの剥製が紹介されている交流棟、屋外にはビーチバレー場、バーベキュー場などもある。

 その交流棟の二階にあるのが「川崎の海苔(のり)づくり資料室」。川崎のノリ作りの歴史を伝えるため、地元の漁業関係者から寄贈された資料が展示されている。収穫場所に移動するために使われた木製の「べか舟」、採取したノリを入れるかご、生ノリをすく「のり簀(す)」などのほか、作業の様子を写した写真パネルも。

 資料を管理する「川崎の海の歴史保存会」事務局の老川美芳さん(85)は、少年時代に父親のノリ養殖を手伝った。「真冬のノリ収穫は、水が冷たくて手の感覚がなくなった」と振り返る。老川さんの曽祖父は千葉から川崎に移り、明治初期にノリ養殖を始めたという。

 だが、川崎臨海部の埋め立てや工場廃水による多摩川の汚染などにより、昭和三十年代以降、ノリ養殖は難しくなる。市港湾局によると、川崎漁業協同組合は一九七〇年代に入り漁業権を放棄、約百年にわたる川崎のノリ養殖は幕を閉じた。資料室にはこうした歴史を紹介するパネルも展示されている。

 九三年に発足した保存会は、元漁師宅に残っていた道具を集め、交流棟の一角を借りて展示を始めた。主に川崎区内の小学生を対象に種付けやノリすき体験も行っている。

 会員は現在十一人。ノリ養殖の体験者は、老川さんを含め二人しかいない。資料室には、川崎港の発展とともに、なりわいを手放さざるを得なかった先祖の思いが詰まっている。 (小形佳奈)

<川崎の海苔づくり資料室> 川崎区東扇島38の1、川崎マリエン交流棟2階。年末年始休館。入場無料。保存会では冬期に一般団体(20人以上)向けにもノリすき体験を行っている。問い合わせは老川さん=電044(266)4651、川崎マリエン=電044(287)6000。

 

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