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【神奈川】

<川崎市長選 150万人都市の行方>(中) 子どもの貧困 社会に伝わらぬ苦しさ

子ども食堂で提供された食事=川崎市内で

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 一皿に盛られた鶏の唐揚げとサラダとご飯を、おしゃべりしながら食べる子どもたち。九月中旬のある日の夜、川崎市川崎区桜本で開かれた「子ども食堂」には、小中学生や未就学児を連れた母親らおよそ百人が、入れ代わり立ち代わり訪れた。

 地元の社会福祉法人「青丘社」が約三週間に一度のペースでこの場を設けている。中学生以上は二百円、小学生以下は百円で食事が提供された。四人掛けの机で食べていたのは、いずれも母親が外国出身の小学校中学年の女子三人。そのうちの一人は、母と姉と三人で暮らす。働く母は帰りが遅く、自分で夕食をつくることもあるという。食事は「いつも通りの味」と素っ気なかったが、「友達と一緒に食べるのは楽しい」と笑顔を見せた。

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 市青少年支援室によると、市が本年度補助金を出す子ども食堂の運営団体は、青丘社など十団体。子どもの居場所づくりなどに取り組むものも含めた十七団体に、計九百三十五万円を補助している。補助金はモデル事業の位置付けで、来年度以降も継続されるのかは決まっていない。

 市が市内の世帯の保護者ら六千人(無作為抽出)を対象にした調査では、国基準の「貧困状態」にある世帯で暮らす子ども(十八歳未満)の割合は昨年度、7・0%と推計。市が公表している「年齢別人口」によると、市内の十八歳未満は昨年十月一日時点で、約二十二万六千人。このうち約一万六千人が貧困状態にある計算になる。

 衣服や食料、学用品を買えない、学校での勉強についていけない、進学をあきらめる…。調査では、家計が苦しい世帯ほど、こう回答する割合が高いことが浮き彫りになった。

 家計が苦しい世帯ほど、夕食を子どもだけで食べる割合や治療していない虫歯がある割合が高かっただけでなく、親に相談相手がいる割合が低かった。

 家計が苦しい世帯は数が少なく、その苦しさが社会に伝わりにくい。子どもには選挙権がないから、政治にも意思が反映されにくい。子どもの貧困対策に取り組む市内の弁護士や児童相談所職員、市議らは昨年、任意団体「かわさき子どもの貧困問題研究会」をつくり、今年三月から定期的に一般向けのシンポジウムを開いている。代表の本田正男弁護士は「子どもの貧困は人権問題。放置すれば経済的にも損失で、社会全体で取り組むべき課題だ」と訴える。

親子連れが次々と訪れた子ども食堂

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 「俺も将来は、親みたいに生活保護をもらって生きていく」。青丘社で子ども食堂の運営に当たる鈴木健さん(42)は、中学生の男子が口にした言葉が忘れられない。中学生の学習支援などをする中で、苦しい身の上を打ち明けてくれる子どもたちと向き合い、親も交えて相談に乗ってきた。

 母子家庭で虐待を受けて育ったシングルマザーが自分の娘に虐待をしたり、子どもがアルバイトで稼いだ進学費用を親がパチンコで使い込んだり、収入が少なく共働きした両親がすれ違いを重ねて離婚したり。苦しい生活を送る子どもたちの置かれた環境はさまざまで、必要な支援も多様だ。

 市の調査では「将来の夢や目標を持っていない」と答えた割合が、家計が苦しい世帯の子どもほど多かった。鈴木さんは言う。「子どもに夢や希望を持て、なんて言えない。それを実現できる社会を大人がつくれていないのに、押し付けられない」 (大平樹)

 

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