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【神奈川】

<川崎市長選 150万人都市の行方>(下) 障害者スポーツが気軽に楽しめる環境を

空調設備のない体育館で練習する「川崎WSC」のメンバー=中原区で

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 二〇二〇年東京五輪・パラリンピックを機に、障害者や高齢者など誰もが暮らしやすい社会を目指す川崎市。障害者スポーツでは小学校で体験講座を開くなど普及に努めるが、障害者自身が気軽にスポーツを楽しめる環境が整っているとは言いがたい。

 八月下旬。午後七時を過ぎても気温が三〇度を超えていたこの日、市のリハビリテーション福祉センター体育館(中原区井田三)で車いすバスケットボールチーム「川崎WSC」が練習していた。

 冷房設備がなく、玄関のドアは開けっ放し。小野寺章彦監督(57)は運動中の事故が原因で脊髄を傷め、体温調節がうまくできないため「暑い日はつらい」。コートは公式サイズより狭く、エレベーターは競技用の車いすでは乗れない。不満はあるが「定期的に使えるので、ここを拠点にしている」。

 円盤を投げて距離などを競うフライングディスクの「川崎FDクラブ」代表を務める宮田正行さん(58)は、川崎区の自宅から電車とバスを乗り継ぎ、この体育館や隣接するグラウンドでの練習に通う。左半身にまひがあり、バス停から二十分かけて体育館まで歩く。競技に必要な道具を体育館に置いており、他所で練習するには運搬がネックになるという。

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 市によると、体育館は一九八一年、障害者の機能訓練施設との位置付けで整備された。障害者団体は無料で利用でき、現在三十七団体が登録している。

 一方、各区にあるスポーツセンターの大体育室は月に一度、抽選で利用団体が決まるが、「車いすでの利用は床にシートを敷いてもらう」(多摩スポーツセンター)という施設もある。

 障害者スポーツの関係者は異口同音に「川崎にも横浜ラポールのような施設が欲しい」と切望する。横浜市が設けたこのスポーツ文化センターは、リハビリテーション施設に隣接する。冷暖房完備のメインアリーナなどのほか、廊下には手すりがあり、点字ブロックの両端は弱視でも分かるように蛍光色のテープで強調されている。指定管理者によると、昨年度の個人利用者のうち約一割が、障害者でも介護人でもない一般利用者。

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 川崎市は、〇八年に策定した中原区井田地区の施設に関する再編整備計画で「障害者専用のスポーツ施設の整備を行う」とした。だが今年一月の改訂版では「障害者スポーツを取り巻く環境が変化してきていることを踏まえ、そのあり方について検討」との表現に。

 「(専用施設整備の)計画を実施してほしい」との市民意見に対し、市は「障害のあるなしにかかわらず、誰もがスポーツに親しめる環境づくりを進めている」と回答。福田紀彦市長は「障害者の人たちだけという話は時代を逆行させている」「施設にバリアーがあっても人の思いやりでカバーしていく」と述べている。

 市内外の施設で水泳などを楽しむ高津区の薄典子さん(62)は股関節に障害がある。「大会に出られるレベルになれば健常者と一緒に泳ぐのに抵抗がないかもしれない。でも例えば病気や事故で脚を失ったばかりの人はその姿を見られたくない。いつでも気兼ねなく練習でき、指導者がいる場所は必要だ」 (小形佳奈)

 

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