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【神奈川】

<元気人@かながわ> 1368年創業「ういろう」25代当主・外郎藤右衛門さん(55歳)

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 「あらためまして外郎藤右衛門(ういろうとうえもん)にございます」。りんとした声が響く。二十五代の襲名式典が十六日、小田原市で催され、外郎武(たけし)を改名して歴代当主が踏襲する名を初めて名乗った。

 一三六八年創業の「ういろう」は現存する日本最古の製薬会社。中国・元の滅亡時、筑前(現福岡県)に渡った元高官を初祖とし、その時に持ち込まれた家伝薬を「薬のういろう」と呼ぶ。丸薬で、胃腸やのどの炎症に特に効くという。

 医薬師で室町幕府の外交も担った二代目が、来日する国賓の接待用に考案したのが米粉の蒸し菓子「お菓子のういろう」。似た菓子は名古屋など各地にあるが、大本は外郎家にたどり着く。京都にいた五代目が戦国大名北条早雲に招かれた一五〇四年以降、小田原で製薬、製菓を営む。

■45歳で薬科大入学

 先代から後継指名を受け、「薬剤師ではないから」と固辞したが「経営だけでいい」と懇願され、根負けした。そして「薬剤師となることで最終責任を自ら取れる」と四十五歳の時に意を決して横浜薬科大に入学した。「単位を落とすだけでなく、追試となっても大学を辞め、襲名もしない」と誓い、退路を断った。

 一日十時間以上の勉強を六年続け無遅刻、無欠席。最前列で授業を受け、リポートは常に百枚以上書いた。卒業時に薬剤師試験に合格。その一年後、先代は安心したように九十九歳で逝去し、自身が後を継いで社長に就任した。

■北条氏を誇りに

 「地域がにぎわってこそ老舗も歴史を重ねられる」と地元を大切にする。分家ものれん分けもせず、伝統の薬と菓子は小田原でしか売らない。街歩きする人を増やしたいと二〇〇五年に本店内に外郎博物館、今年九月には本店横に中国料理店「杏林(きょうりん)亭」を開店した。

 「『四公六民』に税率を下げるなど、民の幸せを考えた小田原北条氏を誇りに思う市民がもっとたくさんいてほしい」と願う。外郎家は、五代百年続いた北条氏の軍師でもあった。

 小田原城発掘調査などで京を模倣した形跡がないことから、「北条氏は小田原で独自の理想の町づくりを始めたのでは」とみる。堀や土塁で町全体を守った小田原城総構えの世界遺産登録の夢も抱く。「漢方兼観光薬局」として、効き目のある地域振興策に知恵を絞る。 (西岡聖雄)

◆私の履歴書

1962年3月 外郎家の一族として生まれる

 84年春  成蹊大経済学部を卒業し、大手信託銀行に入社

2004年9月 銀行を退社し、後継指名された外郎本家に入る

 07年4月 横浜薬科大入学

 13年春  同大を首席で卒業、薬剤師試験に合格

 15年5月 小田原市観光協会副会長に

 17年11月 25代目外郎藤右衛門襲名

 

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