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【神奈川】

<かながわ麺紀行>(2)家系ラーメンの祖 お客と女房が味の師匠

店の前に立つ吉村さん。今も朝5時から仕込みを始める=横浜市西区で

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◆吉村家(横浜・西区)

 豚骨しょうゆのスープに太麺が絡む。「家系ラーメン」生みの親、吉村実さん(69)が横浜駅西口近くに構える吉村家には、極上の一杯を口にしようと長ければ一時間待ちの行列ができる。「お客さんにラーメンを出す時は緊張する」と吉村さん。店の外には座右の銘だという「お客様は我が味の師なり」と記した布が掲げてある。

 一九七四年、横浜市磯子区で店を始めた当初、料理人が近所の横浜南部市場で食材を買うついでによく訪れた。「今日はうまい」「これじゃダメだ」。味覚のプロの評価を参考にスープを調整した。必死だった。開店から二カ月で、体重は八〇キロから五〇キロ台まで落ちた。気がつくと、店に行列ができるようになっていた。食べてくれた人と緊張感を持って接し、厳しい声にも真摯(しんし)に耳を傾け、改善点を見つけ出す。これまで育てた約三百人の弟子にも「お客様は−」と言い聞かせてきた。

 「ファミリーのような雰囲気の店にしたい」と、名字に「家」を合わせた店名にした。息子や娘と思って接した弟子にも、「『家長』として頑張ってほしい」と「家」の名を引き継がせた。県内の「厚木家」、富山県の「はじめ家」などが二〇〇〇年代に開店し、家系ラーメンのジャンルが確立した。

 正確な数は不明だが、全国に家系は約千店あるとされる。味の濃さや麺の硬さなどを客に尋ねるスタイルや、のりとホウレンソウ、チャーシューといった定番の具材など、多くの店が吉村家の手法を踏襲している。

 「お客様」に加えてもう一人、ご意見番がいる。実家が日本料理店の妻玉子さん(67)。しょうゆだれの味は、玉子さんに教わりながら調えた。吉村さんは「俺の師匠は女房」と語る。玉子さんの毎日の味見があるから「安心して提供できる」という。

家系ラーメンの基本、のり、ホウレンソウ、チャーシューがトッピングされた吉村家の一杯

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 周囲の声を採り入れる姿勢こそ、家系ラーメンが多くの人に支持される理由かもしれない。今年七十歳になる吉村さんは、今も午前五時に店に出てスープを仕込み、若い従業員にも積極的に意見を聞く。

 「自分は周りに支えられて新しいラーメンを作れた。うちのやり方に執着せず、こだわりのあるラーメン店が増えていったらいい」。日本のラーメン文化がさらに花開くために、横浜の巨匠はそう願っている。

<メモ> 横浜駅西口から徒歩約10分。営業時間は午前11時〜午後10時、原則月曜定休。家系ラーメン店はファンの間で、吉村家の系譜を継ぐ「直系」、独自に開業した「インスパイア系」、チェーン展開する「資本系」に分かれている。吉村家=電045(322)9988。

 

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