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【神奈川】

<かながわ麺紀行>(4)スピードとだしが命 1日1000杯売る人気店

昼時ともなれば、そばをすする客が店の外にまであふれる。奥は横浜駅みなみ西口=横浜市西区で

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◆きそば鈴一(横浜・西区)

 「天ぷらそば!」と注文を復唱する威勢のいい声が聞こえたかと思ったら、湯気の立つ器が手渡される。朝の横浜駅みなみ西口(横浜市西区)。スーツ姿や作業着姿の約二十人が道路にまではみ出し、そばをすする。約四十年、この場所で営業を続けている「きそば鈴一(すずいち)」は一日約千杯を売り上げる人気店だ。

 なにしろ速い。「立ち食い店だからスピードは重要」と店長の水谷進さん(68)。厨房(ちゅうぼう)には常に三人が立ち、湯通ししたそばをセットした器に鍋からつゆを注ぎ、天ぷらや生卵をのせる。一連の流れ作業はわずか二十秒。目の前の連携プレーが小気味いい。

 もう一つ、人気の理由がある。通い始めて三十年という男性(54)は「安いのに、だしの効いたつゆがうまいんだ」と話す。ベースは濃縮された市販品。通常は湯で薄めるところを、宗田鰹(そうだがつお)の削り節から取っただし汁で割る。「香りが豊かになる。開店当初からの味を引き継いでいる」(水谷さん)

 市によると、きそば鈴一の営業許可が出たのは一九七七(昭和五十二)年。その前は甘栗販売の「鈴一総本店」(横浜市中区伊勢佐木町)の支店だった。売り上げが頭打ちになり、業態の変更を迫られた。社員は「多種多様な菓子が出てきて、素朴な味の甘栗は売れなくなったんだろう」と振り返る。総本店も二〇一〇年に店を閉じ、「鈴一」の屋号はそば店だけが引き継いだ。

 周りの景色が移り変わっても、きそば鈴一は昔のたたずまいのまま、駅前を通る人々の胃袋を満たしてきた。水谷さんが働き始めた九〇年代初めは、道を挟んだ向かいに占い師が机を並べていた。雨が降ると、店の軒下でそばをすすった。「ついでに競馬の占いをしてもらったけど、外れちゃったよ」

一番人気の天ぷらそば(350円)

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 水谷さんによると、開店当時の社長がビルのオーナーと知り合いだった。その縁もあってか巨大ターミナル、横浜駅の目の前という超一等地で、チェーンの立ち食いそば店をしのぐ人気で営業を続けているようだ。

 営業中は忙しくて常連客と言葉は交わせなくとも、「今日もありがとう、とアイコンタクトで伝えている。学生だったお客さんが大人になっていくのを見るのはうれしいよ」と水谷さん。きそば鈴一はきょうも、いつもの場所に立っている。

<メモ> 横浜駅みなみ西口を出てすぐ。営業時間は午前7時〜午後9時半。Suica(スイカ)など交通系ICカード対応の食券機を2年半前に導入。そばの他に、うどんときしめんのメニューもある。「鈴一」は甘栗店創業者の鈴木一平さん(故人)の名前から取った。

 

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