東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 神奈川 > 記事一覧 > 1月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【神奈川】

川崎・老人ホーム転落死初公判 全国の施設で虐待後絶たず

初公判で検察側の冒頭陳述を聞く今井被告(イラスト・なかだえり)

写真

 わずか二カ月の間に三人もの入所者が転落死させられたとされる事件の裁判が二十三日、横浜地裁で始まった。殺人罪に問われた川崎市幸区の老人ホーム元職員今井隼人被告(25)は起訴内容を全面的に否認しているが、高齢者施設での職員による虐待は全国的に後を絶たない。専門家は原因として、人手不足や職員の教育の不十分さを挙げる。 (加藤益丈)

 厚生労働省によると、施設職員の高齢者に対する虐待は、二〇一五年度は四百八件。前年度より百八件増え過去最多を更新した。ここ数年一万五千件台で推移している家族らによる虐待に比べれば圧倒的に少ないものの、〇六年度(五十四件)の七倍以上になり、激増ぶりが際立っている。

 昨年八月には東京都中野区の有料老人ホームで、入所者の男性=当時(83)=が死亡。当時、宿直勤務していた元職員の男(25)が男性を浴槽に投げ入れて水死させたとして殺人容疑で逮捕、起訴された。捜査関係者によると、男は世話中に布団を汚されたことに不満があったという。

 施設職員による虐待が増えている理由を、淑徳大の結城康博教授(社会福祉学)は「労働環境の悪さが人手不足を招き、それが職員の質の低下や不十分な教育、不満の増加へとつながる悪循環に陥っている」と分析。「報酬を上げて人手を確保するだけでなく、虐待のきっかけになりやすい認知症について学ばせ、どうケアすればいいかしっかりと教育していくことなどが必要だろう」と指摘した。

◆同級生「事実隠さず話して」

 今井被告の口から出る言葉を聞こうと地裁には二十三日朝、四十八席分の傍聴券を求めて百八十六人が集まった。

 「どうしてこんなことになったのか、気になって来た」。高校一年時に同じクラスだった男性(25)は険しい表情を浮かべた。救急救命士の資格を持つ今井被告は当時から「人を助けたい」と口にしていたという。「正義感が強かった。事実を隠さず話してほしい」

 現場になった施設と同系列の老人ホームに母親(87)が入所している主婦桐原ひとみさん(62)は「何があったか知りたい」と話す。

 大学四年の清水莉子さん(22)は母親が老人ホームで働いていたことから、事件に興味を持った。「安心して預けた被害者家族のことを思うと、とんでもない話」と語った。 (梅野光春、加藤豊大、鈴木弘人)

写真
 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報