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【神奈川】

<元気人@かながわ> 中国料理ヒントに新製法考案の茶師 佐々木健さん(46歳)

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 カレーを作るとき、硬いものを先に鍋に入れる。順番を間違えるとタマネギが溶けてしまったり、ニンジンが軟らかくなっていなかったりする。「お茶も同じだと思ったんです」。元中国料理のシェフという経歴を持つ茶師は言う。葉や茎、芽など茶を十二の部位に分け、それぞれ焙煎(ばいせん)してブレンドする「十二微細分類製茶法」の考案者だ。

■奥深さに魅了

 二〇〇六年、スイーツ開発のプロジェクトを通じて知り合った日本茶製造会社の社長と意気投合。横浜市で中国料理店を経営する合間に県内や静岡県の日本茶製造工場に通い、茶が持つ奥深さに魅了された。

 新製法を開発したのは間もなくのこと。通常、茶は六つの部位に分ける。それを、「素材を生かす」という中国料理のシェフとしての発想から倍の手間をかけ、より繊細な味を引き出すことに成功した。

 もともと茶に親しむ素地はあった。小学一年の時から、厳格な祖母に勧められて茶道を学んだ。茶師の道を踏み出して三年後の〇九年に世界緑茶コンテストで最高金賞を受賞。一三年にも同じ賞を手にした。「祖母のおかげかもしれませんね」と感謝を忘れない。

■震災で苦境に

 苦労も経験した。東京電力福島第一原発事故後、神奈川県内の茶葉から放射性物質が検出された。風評被害などで、〇八年に鎌倉市に開いた日本茶専門店を閉めることに。税理士から会社も畳むよう進言されたが、藤沢市に拠点を移し、プレハブの店舗で再起を図った。

 知り合いのつてで左官の仕事を手伝い、飲食店のプロデュースもして生活費を捻出。その傍ら、風評被害に苦しむ茶農家を支援しようとスーパーや飲食店でPRを続けた。その心意気を感じた京急百貨店(横浜市)が、県内茶を販売する特設コーナーを設置。復興支援の取り組みが評価され、民間企業や行政でつくる「フード・アクション・ニッポン」から表彰された。

 一六年には、日本最古の茶園とされる日吉茶園(滋賀県)を管理する日吉大社から「名誉茶師」の称号を受けた。「日本のお茶という文化遺産を大切にするため、さらなる精進を続けていきたい」。向かい風が吹こうが追い風が吹こうが、茶に向き合う姿勢は変わらない。 (布施谷航)

◆私の履歴書

1971年 横浜市で生まれる

2006年 日本茶工場に通い始める

 08年 鎌倉に日本茶専門店「茶来未(ちゃくみ)」出店

 09年 世界緑茶コンテストで最高金賞受賞

 11年 原発事故の影響で風評被害。鎌倉から藤沢に拠点を移す

 12年 フード・アクション・ニッポンアワード「食べて応援しよう!」賞を受賞

 13年 世界緑茶コンテストで再び最高金賞受賞

 16年 日吉大社から「名誉茶師」の称号を受ける

 

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