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【神奈川】

その日のために 津波に備える <1>住民の自助/高齢化する城ケ島

高台につながる避難用階段で「地震が起きたらとにかく逃げる心構えが大事」と語る石橋さん=三浦市の城ケ島で

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 「一人じゃ無理だ」。二〇一一年三月十一日。津波の避難指示が出たのを受け、県最南端・城ケ島(三浦市)の坂を上っていた町内会長石橋銀一さん(76)は息を切らし、途方に暮れた。

 足腰が弱った高齢女性の手を引っ張りながら避難するも、なかなか進まない。他の住民と協力し、標高一五メートルの場所で「ここなら大丈夫」と歩みを止めた。高齢者が多い島で、大勢の人が速やかに避難するのは難しい。それに加え油断もある。高台の上まで行かない人ばかりで、「早く帰ろう」との声も漏れた。

 「親から『立っていられないほどの揺れだった』と聞いた関東大震災でさえ津波の記録は残っておらず、危機感は薄かった」。石橋さんは振り返る。その意識を変えたのがテレビの映像。東北の沿岸部をのみ込んだ巨大津波の威力に目がくぎ付けになった。

 かつて働き盛りの漁師らでにぎわった島も、漁業が衰退し若者が減少。五百人弱が住む島の高齢化率は四割を超え、災害弱者が少なくない。「島にもし来たら」。避難中の状況を思い出し、ぞっとした。

 国の中央防災会議は東日本大震災後、相模湾から房総半島南東沖にかけての「相模トラフ」を震源とする関東大震災型のマグニチュード(M)8級の地震が発生すると、最大で死者七万人、焼失全壊家屋は百三十三万棟と見積もった。県沿岸部には最大十メートルの津波が数分で押し寄せる。最大クラスの地震が起きれば、島の南側の崖地で県内最高の二四・九メートル、港湾部には十一メートル超の津波が十一分で到達する。

 島に高い建物はなく、市中心部につながる大橋を渡って逃げるには時間がかかる。避難階段や坂を上り、高台に逃げるのが市の想定する避難方法。住民の自助と共助頼みなのが実情で、市防災課の藤田健二課長は「避難訓練を重ねていくしかない」と語る。

 「小さい島だからみんな顔見知り。情報は入りやすい」(石橋さん)。十四地区ごとに要援護者をリストアップし、毎年の避難訓練では全員が十分以内に避難する目標を達成している。

 ただ、訓練は時間とルートがあらかじめ決まっている。「本番」はいつ、どこにいる時に起きるか分からない。「いざとなればバラバラに逃げられるように」と訓練で使う三ルートだけでなく、高台につながる八つの階段と坂をすべて知っておくよう呼び掛ける。

 「『想定外』を設けてはいけないのが東日本大震災の最大の教訓」と石橋さん。その思いを胸に、備えは続く。 (福田真悟)

 ◇ 

 総延長四百二十八キロが海に面する本県。東日本大震災同様、大地震が起きれば津波で甚大な被害が出ると予想される。震災七年を迎えるのを機に、「備え」の大切さを改めて考えた。

 

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