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【神奈川】

その日のために 津波に備える <5>県内工業地帯の災害対策/費用負担は企業頼み

石油タンクが並ぶ京浜工業地帯。手前は東扇島東公園=川崎市川崎区で

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 「いいぞ」「もっと攻めろ」。先月下旬の休日、川崎市川崎区の埋め立て地にある東扇島東公園では少年サッカーの試合が行われ、東京湾と工場群が織りなす独特の景色を眺める家族連れもいた。そんな場所にも津波は来る。「最大三・五メートル。石油と高圧ガスのタンクも近くにある」。県工業保安課の穂積克宏課長は訴える。

 東京都から川崎市、横浜市にかけての沿岸部に広がる京浜工業地帯。東日本大震災の際、県内の石油施設に被害はほとんどなかった一方で、千葉県の製油所で大規模な火災・爆発事故が発生。津波が原因ではなかったが六人の負傷者を出し、鎮火に十日を要した。穂積課長は「密集しているタンクが一つでも倒れれば大惨事になる」と危機感を強める。

 国は震災後、ガスタンクの耐震基準を強化。企業側の意識も、津波対策を含めて高い。「タンク対策は序の口。配管と設備を守るため護岸や地盤を強化し、製油所全体をコントロールする制御盤は高所に移した」。JXTGエネルギー川崎製油所(川崎区浮島町)の野沢哲也副所長は説明する。「安全対策に終わりはない」。震災から七年がたつ今も敷地には工事車両が行き交う。

 県は「県内工業地帯の災害対策は全国最先端」と胸を張る。ただ、費用の多くは企業の負担。ある石油精製業者は「資金力で差が出る。こっちが万全の対策をしても、隣で事故が起きたら意味がない」と語る。

 帰宅困難者対策も、県は川崎、横浜両市に任せっきり。統一した計画はなく、取り組みに差が出ている。

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 川崎市は今月九日、業者と一緒に、船で内陸に避難する訓練を初めて実施。市危機管理室の佐藤正典担当課長は「内陸へ逃げる道が橋や地下通路一本しかない場所は、孤立する可能性がある」と話す。これに対し、最大三・九メートルの津波が想定される横浜市の反応は鈍い。市危機対処計画課の宇多範泰課長は「この高さの津波でタンクは倒れない」とし、帰宅困難者の発生も想定していない。

 東日本大震災の例を出すまでもなく、想定内に収まる保証はどこにもない。「その日」に備えるために、組織の垣根を越えた連携が求められる。  (志村彰太)

  =おわり

 

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