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【神奈川】

<はぐるま稗原農園 四季折々>ついのすみかを目指して ホームをバリアフリーに

手分けして食事の準備をする利用者たち=多摩区で

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 社会福祉法人「はぐるまの会」(川崎市多摩区)が運営する縫製工場や「はぐるま稗原農園」(宮前区)などで、中重度の知的障害者たちが働いている。

 彼らは、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス(生活介護)を受け、市内に九カ所あるグループホームで暮らす。このうち多摩区の「はぐるま共働学習ホーム」では、二十一〜四十六歳の男性五人が共同生活を送っている。

 ホームで食事作りをして三十一年になる法人職員の鬼海(きかい)紀子さん(72)は彼らの母親役でもある。「障害者のグループホームの中には、給食施設から食事を配送するところも多いが、うちはお母さんの味と手作りを基本に“家庭”に近づける努力をしている」。入居者が鬼海さんと食材の買い出しに出かけることもある。

 一月下旬のある日の夕食は、サンマの煮付け、しらすおろし、ワカメと豆腐のみそ汁など。「大根をおろしてもらおうかな」「ワカメはここに出てるわよ」。鬼海さんの指示で夕食作りを手伝い、配膳し、食器を洗い、しまう。その後はお茶を飲みながら、一日の出来事を報告し合った。

 二年前にできたこのホームは「ついのすみかに、との思いで設計した」と法人職員の福田真さん(41)。玄関や風呂に段差はない。車いすでの利用を想定して通路や各部屋の出入り口の幅は広めに取った。将来的には建物の一階と二階を結ぶエレベーターも設置できるようになっている。

 福田さんによると、知的障害者は早めに老化を迎える傾向があるとの研究事例も報告されているという。「体調不良を人に伝えられなかったり、他人との関わりの中でストレスを抱えたりすることが多い特性も影響してしまうのでは」と福田さん。現在、利用者の最高齢は五十三歳。そう遠くない将来、高齢化対応とみとりが必要になると考えている。

周辺に住宅が建設されている、はぐるま稗原農園=宮前区で

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 利用者の体力向上、生活リズムの維持に欠かせないのが、日々の運動と、年に一度のマラソン大会や登山合宿だ。グループホームでは、朝食前の散歩やジョギング、夕食後の腹筋や青竹踏みなどの軽い運動が日課となっている。先月二十二日に行われたマラソン大会では、五キロ、十キロ、ウオーキングの部に分かれて多摩川沿いを走った。

 中学校の特殊学級(現在の特別支援学級)の元教員らが一九八三年、古い工場の二階を間借りした縫製工場と、二軒長屋の片方を借りての共同生活ホームをスタートさせたのが、はぐるまの会の原点だ。グループホームに対する国の支援制度が整う前から「障害者が働きながら地域で暮らす」を実践してきた。

 発足当初から運営に関わる元教員の岩田洋子さん(70)は「はぐるま」の名に込めた思いをこう語る。「一人一人は弱くても、力を出し合えば、大きな物を動かせるようになる」

 春本番。一月の大雪にも負けなかったコマツナやホウレンソウが青々とした葉を広げ、利用者たちが種まきや草むしりにいそしむ日常が続いていく。

  =おわり

 

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