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【神奈川】

「疑似喪失」通して「大切なもの」再確認 横浜で体験講座

両親への思いをスクリーンに映しながら、大切なものを失う体験を語る高橋さん=横浜市西区で

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 東日本大震災で両親を亡くした被災者の話を聴きながら、大切なものを突然失う気持ちを味わう「疑似体験」の講座が20日、横浜市西区で開かれた。自身の体験を伝える活動をしている高橋匡美(きょうみ)さん(52)=宮城県塩釜市=が登壇し、参加者と共に「大切なもの」とは何か、普段どう接していけばいいのかを再確認した。 (志村彰太)

 高橋さんは震災の津波で、同県石巻市に住んでいた父佐藤悟さん=当時(82)=と母博子さん=同(73)=を亡くした。ショックから自宅に引きこもった時期を経て二〇一四年、知人の誘いでスピーチコンテストに参加。それを機に講演活動を始め、昨年から東北学院大の金菱清教授(社会学)と一緒に各地で「疑似喪失」の講座に取り組んでいる。

 この日は教育関係者や高校生ら十六人が参加。最初に、「形のある大切な物」「大切な思い出」「大切な人」「夢、目標」をそれぞれ三つ、計十二個を四色十二枚の紙片に一つずつ記入。続いて高橋さんが体験を語った。

 頑固だけどいつも笑顔の父、きれいでおちゃめで憧れの存在だった母…。「それがある日、めちゃくちゃにされて奪われる。それが災害」と高橋さん。実家で母の遺体を、遺体安置所で父の亡きがらを確認した。父の口には砂が詰まり、体は土色になっていた。「指先からにじんだ血の赤色が、父の生きていた証拠だった」

 話の最中、金菱教授が一枚ずつ紙を破いていくよう指示する。途中で涙を浮かべる参加者もいた。最後の一枚は一度、強く握り締めた上で破いた。金菱教授は「失うこととはどういうことか、人ごとの災害が、自分のこととして理解してもらえたのでは」と締めくくった。

 参加者の高校二年佐藤聖(ひじり)さん(17)は「最後に残った紙は『母親』だった。うっとうしく感じる時もあるけど、共有できる時間を大切にしようと思った」と話した。

 

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