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【神奈川】

「お父さん、一緒に死のうか」 厚木老老介護の夫婦無理心中 周囲救えず

鶴見区の市民団体「おりづる会」が月に1回開いている「介護者のつどい」で語り合う参加者。専門家は、介護者にはこうした場が不可欠と訴える=同区で

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 厚木市で、妻(79)が自宅で夫(80)を殺害後、自ら命を絶つ無理心中とみられる事件があった。認知症の夫を懸命に介護していた妻が悩みを深めていたことに周囲が気づいていたにもかかわらず、最悪の事態を防げなかった。識者は「地域と行政が連携し、介護者の心をケアする体制の強化が必要」と説く。 (加藤豊大)

 「暗くなったのに電気がつかない」。近くに住む男性(61)が異変に気付いたのは二月二十五日夕。通報を受けた厚木署員らが駆け付けると、一階和室の介護ベッドで夫が死亡、二階和室で妻が首をつって亡くなっていた。夫の首にはタイツで絞められたような痕があり、一階居間に「ご迷惑をかけます」という妻の手書きメモが残されていた。

 近所の女性(50)によると、夫は二年前に認知症と診断され、昨年十一月には車いす生活に。小柄な妻一人ではトイレや風呂の介助が難しく、女性が手伝うこともあった。県外に住む長男や長女とは疎遠で、手助けは得られない。見かねた女性が施設の利用を勧めたものの、住宅ローンの返済が残っており、費用を負担できないと打ち明けられた。

 「死にたい」。妻は今年に入ると、こう漏らすようになった。夫は症状が進み、問い掛けてもほとんど話さなくなっていた。ある日、妻が力なく夫に言うのを女性は聞いた。「お父さん、一緒に死のうか」

 警察庁によると、二〇一六年に全国で起きた「介護・看護疲れ」が動機の殺人は無理心中を含め四十一件。統計を取り始めた〇七年以降、年四十〜六十件弱で推移し、減る兆しはない。

 こうした現状に、各地の地域包括支援センターやNPO法人などは、介護者の集いを定期的に開くなど地域でケアする体制づくりに努める。東京都杉並区で介護者が集うカフェを運営し、事業者向けの講座も開くNPO法人「介護者サポートネットワークセンター・アラジン」の牧野史子代表は「『眠れない』とか、皆同じような悩みを抱えている。問題は解決しなくても、家族にも言えない思いを共有すれば気持ちがふっと楽になる」と話す。

 一方で、「集まりに参加せず、一人で抱え込んでしまう介護者がいるのも事実。そうした人たちをいかに救い出すかが課題」と指摘する。県内では秦野市が〇七年、ケアマネジャーを通じ市内全体の在宅介護者を把握し、アンケートでうつ傾向を調査した例がある。

 牧野さんは「自治体が積極的に介護者の実態を調査し、地域で見守り活動をする人たちと情報共有を図るなど、両者の連携強化が不可欠だ」と語った。

 

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