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【神奈川】

<町の資料館 かわさきを歩く> 大師河原干潟館(川崎区)

打ち上げられたミズクラゲの死骸を手に干潟について説明する佐川さん=川崎区で

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 工場や高層マンションが立ち並ぶ川崎市川崎区の多摩川下流。沿岸部には潮の満ち引きなどに合わせて干潟が現れる。カニや貝、魚などがすみ、それらを求める鳥も集まってくる。足元で見過ごされがちでありながら、実は豊かな生態系について、施設で実際に触れて知ることができる。

 「手で覆って暗くしたら、カニはおとなしくなるよ」。干潟館の運営を担うNPO法人「多摩川干潟ネットワーク」理事長の佐川麻里子さん(56)が、体長五センチほどのカニの捕まえ方を教えてくれた。施設を訪れていた幼稚園児の女児二人が、言われた通りに捕まえ、手に乗せて笑い声を上げた。館内の水槽には、計約二十種類のカニや魚を展示している。いずれも目の前を流れる多摩川で採れたものだという。多摩川下流と聞くと工業的なイメージが強いのに…と驚く記者に、女児の母親が「近くのマンションに住んでいますが、入り口でカニが歩いているのをよく見かけます」と教えてくれた。

 ホワイトボードには、六郷橋から大師橋まで約三キロの沿岸一帯で観察された生き物が書き込まれていた。ヤマトオサガニ、クロベンケイガニ、イサザアミ、マハゼ、アオサギ−。本当にこんなにいるのか信じられず、佐川さんに干潟への同行をお願いした。

 干潮を迎えた時間で、川の中央近くまで干潟になっていた。ゴム長靴を泥に取られながら足を進めると「ほら、あそこ」。十メートルほど前方の地上に体長十センチほどのカニが見えた。言われなければ気付かない小ささだ。近づくと足音に気付いて泥の中に隠れてしまうという。よく見ると、足元の泥にはカニの足跡が無数についていた。

 水際では小魚を求めるサギが数匹、時折、水中にくちばしを突っ込んでいた。泥を少し引っかくと、シジミがごろごろ出てきた。岸に近いアシ原で石をひっくり返すと、十匹ほどのカニが一斉に逃げ出した。「この辺りは海水と淡水が混じり合う汽水域。固有の生き物が集まってくるんです」。佐川さんがいとおしそうに干潟に目をやった。

 干潟館の建物は、国と市が設置した水防センターで、水害時などは防災拠点として機能する。NPOが平時の運営を委託され、自然観察会や生き物調査などを行っている。館内には、大雨で増水して干潟がなくなった沿岸部の写真も並べてある。佐川さんは「多摩川がかつて暴れ川だった歴史や、今も危険なことが起きうることも、子どもたちに伝えていきたい」と話した。 (大平樹)

<大師河原干潟館> 川崎区大師河原1の1の15。正式には大師河原水防センターで、干潟館は愛称。京急大師線の東門前駅から徒歩約7分。開館は水、木と土日祝日の午前10時〜午後4時。4月28日から5月6日の大型連休中の休館日は1日。問い合わせは、干潟館=電044(287)7882=へ。

 

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