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【神奈川】

<元気人@かながわ> 飲食店展開「たのし屋本舗」代表・下澤敏也さん(52歳)

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 イカを抱えてほほ笑む漁師、真剣なまなざしの農家の男性。経営する居酒屋のメニューには、生産者の写真と、それぞれのこだわりを記した文章が添えられている。「食材のストーリーを伝えると、客がかみしめて食べてくれる。おいしさが倍増するんです」

 生まれ育った横須賀市と、横浜市で、六つの飲食店を経営する。食材は、ほとんどが三浦半島で収穫されたもの。「三方を海で囲まれ、新鮮な魚はもちろん、ミネラルをたっぷり吸い込んだ土壌が生む良質な野菜もある」とほれ込む。

 飲食店経営の傍ら、生産者の支援に力を入れる。二〇一一年から仲間と協力し、横須賀市の離島・猿島で早採れのブランドわかめ「さるひめ」を養殖。収穫期をずらして価値を高め、高齢化に悩む漁師の後継者確保に貢献した。一四年には食品の加工場を造り、規格外や余り物の野菜、魚を買い取りドレッシングなどにして商品化した。

 三浦半島の食材を扱う店とその生産者を集め、来場者と交流する飲食イベントも定期的に開く。「漁師や農家は普段『おいしい』の声を直接聞けない。そういう機会があると、やる気につながる」

 生産者を大切にする原点は、かつての挫折。一九九七年に横須賀市で一店目を開いた当初、客が入らず、自分の給料も出せないほどだった。「コンセプトもなく、流行の創作料理をただ出すだけ。ひどかった」と苦笑する。

 苦境を救ってくれたのが三浦半島の食材。港に足しげく通い、漁師たちと仲良くなると、仲買人を通さず仕入れられるように。安価な朝取れの魚の刺し身盛りが話題を呼び、予約が入りだした。農家とも関係を築き、新鮮な魚、野菜を前面に打ち出して人気が高まり、店舗拡大につながった。

 客の笑顔に手応えを覚える一方、気がかりは人口減が進む地元、横須賀市の衰退。活性化につなげようと昨年二月、地元で収穫されたショウガや麦などを原料に使った「横須賀ビール」の醸造所を市内にオープン。海外のビールコンペティションにも出品し、「横須賀」の名声を高めようと試みる。

 「地元でも地域の食材の魅力を知らない人は多い。それを伝えるのが自分の役割。これからも食を通じて地元を盛り上げたい」と意気込んだ。 (福田真悟)

◆私の履歴書

1965年12月 横須賀市に生まれる

 88年3月 関東学院大経済学部卒

 97年4月 居酒屋で4年間の修業を経て、同市追浜町に居酒屋「うれしたのし屋」をオープン

2011年11月 ブランドわかめ「さるひめ」の養殖に取り組む「猿島海畑活性化研究会」を仲間らと結成

 14年11月 市場に出せない野菜などを商品化する加工場「Co−Lab(コラボ)」を横浜市西区に設置

 17年2月 クラフトビール「横須賀ビール」の醸造所を併設した飲食店を横須賀市にオープン

 

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