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【神奈川】

バラに魅せられ60年余 鎌倉の育種家・大月さん

大月さん(右)が生み出したバラ「春の雪」=鎌倉文学館で

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 「鎌倉」「静の舞」「流鏑馬(やぶさめ)」−。鎌倉ゆかりの名前が付いた新種のバラを生み出し続けるアマチュア育種家がいる。大月啓仲(ひろなか)さん(89)=鎌倉市=は、六十年を超えるバラ作りの中で、三十数品種を開発。国際的なコンクールの入賞経験も豊富だが、「気品と優美さを併せ持つバラはまだまだできていない」と、その情熱は衰えない。 (北爪三記)

 「今年で九十歳になる。健康の基礎はバラで、夢と希望を持ちながら毎日やっています」。鎌倉文学館(長谷一)で五月二十四日に開かれたバラ講座。穏やかな口調で大月さんが語り始めると、集まった市民らが一気に引き込まれた。

 茨城県日立市出身の大月さんは、花作りが好きだった姉の影響で子どものころから花に親しんだ。戦後、東京の大学を卒業し、乾電池などを販売する仕事に就いた。そんな中、世界的なバラの育種家・鈴木省三さん(故人)と出会ったのが、本格的にバラの世界に入るきっかけになった。

 最初は、きれいに咲かせる栽培技術を競うコンテストに熱中した。適切な栄養バランスや水の量と温度、成長時期に合わせた乾燥具合などは、品種によって異なる。本を読み、試行錯誤を重ね、優勝を目指した。

 次第に、「人のバラで優勝してもつまらない」との思いが芽生える。当時、日本で生まれた品種は少なく、ほとんどが外国でできたものだった。「自分で作り、育てた品種で一等を取るのが、本当のバラ作りの夢ではないか」。そう考え、育種に挑み始めた。

 掛け合わせる種類を決めて交配し、種を取ってまき、花を咲かせる。これらの過程を経て新品種を世に出すには、最短でも三年はかかるという。香りや色合い、花の形、丈夫さなどを指標に、自宅の庭でさまざまな掛け合わせを試し、データを蓄える。多い年には約千種類を咲かせたこともある。

 大月さんが目指すのは、気品と優美さのある花。「バラなら出せると思うが、まだまだできていない。完璧がないから、逆に続けられるのかもしれない。できれば百を過ぎてもバラと楽しんでいきたい」と話す。

 鎌倉文学館のバラ園に育つ二百種、二百四十五株の中には、大月さんが作った二十三品種もある。十日までの「バラまつり」期間中、新たに大月さんが作ったクリームピンク色のバラの名前も募集している。問い合わせは、同館=電0467(23)3911=へ。

 

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