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【神奈川】

<元気人@かながわ>乳がん体験者コーディネーター 吉田久美さん(51歳)

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 相模湾から昇る荘厳な日の出が、乳がん患者の顔を照らしていく。鮮やかなピンクの朝焼けに染まる真鶴半島・三ツ石海岸。症状はさまざまで、転移して手術できない人もいる。「この病気に一人で向き合うのはつらい」。皆と浜に立つ瞬間がとても貴重な時間に思え、涙の粒があふれ出た。

■貸し切りで温泉

 「切除した傷痕への他人の視線が気になり、温泉に行けない」という声に応えて一昨年秋、貸し切り温泉ツアーを企画。勤務先の平塚共済病院(平塚市)の患者ら二十〜八十代の女性十七人が参加した。

 乳がん検診を促すピンクリボン運動を応援する「湯河原温泉おかみの会」(湯河原町)が協力し、同温泉の「ご縁の杜(もり)」に泊まって一般客がいない大浴場と露天風呂を堪能した。

 心配させまいと家族にも本心を見せない患者が多い。気兼ねなく話せて盛り上がり、入浴後の懇親会は修学旅行のような女子会に。「消灯後は枕投げをしないで」の冗談で午前二時半、やっとお開きになった。

 三ツ石海岸の日の出を見たのはその数時間後。全員が参加し、生の息吹に満ちた夜明けに勇気づけられた。昨秋もこの宿で二回目のツアーを開き、今秋は町内の別の温泉宿を楽しむ。

■ガーゼ帽子考案

 二〇〇八年五月、乳がんを告知され、クリスマスの日に乳房を部分切除した。闘病中「患者を助ける側になりたい」と勉強し、他の患者に適切な情報を伝える「乳がん体験者コーディネーター」の資格を得た。同病院の乳がん情報提供室開設と同時に職員となり、病棟にも出向く。医師や看護師とチームでサポートする先駆的な取り組みという。

 患者に寄り添おうとメンタル関連の資格も取得。副作用で頭髪が抜ける患者用にガーゼの帽子を考案した。夏もむれず頭全体を隠せる。「ガーゼ帽子を縫う会」をつくり、患者や市民に作り方を広めている。

 三年前に乳がんが再発し、再び乳房を部分切除した。不安は消えないが「誰かの役に立つことでもう一度前を向ける」と話す。「支えるだけでなく、多くの患者に支えてもらってもいる」。患者への感謝を力に、希望の灯をともし続ける。(西岡聖雄) 

◆私の履歴書

1966年11月 藤沢市に生まれる

 87年4月 大手証券会社に入社し、7年間勤務

2008年5月 乳がん告知、12月に手術

 10年1月 乳がん体験者コーディネーターの資格を取得

   5月 平塚共済病院に新設の乳がん情報提供室勤務

 12年10月 メンタルケア心理士の資格を取得

 14年1月 ガーゼ帽子を縫う会結成

 15年3月 乳がん再発、手術

 16年10月 貸し切り温泉ツアーを初開催

 

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