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【神奈川】

<かわさき見聞記・大平樹>大人が虫捕り?調査です 蚊を採集する市職員に同行

器用に網を操る角課長=高津区で

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 夏になると存在感を増す、蚊。刺されるとかゆくなるだけではなく、危険な感染症を広げる恐れもある厄介者だ。刺されるのを覚悟で、川崎市内の公園などに出向いて捕まえる職員たちがいると聞き、今月上旬に同行した。通行人に不審がられながらも彼らが蚊を捕まえるのは、ウイルスを持っていないか調べる地道な取り組みのためだった。

 午前九時、高津区下作延の市緑ケ丘霊園。区保健福祉センター衛生課職員の佐々木美保さん(45)が、草むらの近くで虫捕り網を手に、周囲に目を凝らし始めた。この日は雨上がりとあって肌にまとわりつくような湿気で、近くにいる記者は今にも蚊に刺されそうな気がしてきた。佐々木さんが着用した長袖、長ズボンはいずれも白色で、自分に近づいた蚊を見えやすくする工夫だという。

 採集は八分間。肌の露出が少なく、虫よけスプレーも使って完全防備の佐々木さんより、記者に同行してくれた同課長の角洋之さん(57)の方に蚊が集まっているようだった。半袖シャツのクールビズスタイルのせいだろうか。

 佐々木さんから網を受け取った角さんが次々と捕まえていった。蚊が網に入ったら素早く手首を返し、網を巻きつけて出口をふさぎ逃げないようにするのは、セミなどを捕まえるのと同じ要領だ。この日捕まえた十数匹は逃げないように凍らせて、市健康安全研究所(川崎区殿町)に送り、ウイルスを持っていないかどうか調べるという。

 市感染症対策課によると、蚊を集めるには、二酸化炭素をボンベで発生させてわなにおびき寄せる手法と「人囮(ひとおとり)法」がある。後者は、人がおとりになって蚊を集め、虫捕り網で捕まえる手法。佐々木さんや角さんがやっていたのもこのやり方だ。記者にはあまりに原始的に感じられたが、角さんは「わなを仕掛け、回収するのは二度手間になるので、人が捕まえた方が効率が良い」と説明した。

 ただ、悩みもあるという。佐々木さんは「散歩している人から不審そうに『何しているんですか』と声を掛けられることがある」と打ち明けた。確かに、一見何もない草むらで大人が網を振り回す姿は、怪しまれるのも無理はないかもしれない。

 同課は五月から十月にかけて毎週、市内で蚊を捕まえては、デング熱などの感染症ウイルスを持っていないか調べて公表している。捕まえたのは昨年度、二千三百三十九匹。二〇〇二年の調査開始以降、陽性が出たことは一度もない。

 首都圏を中心に百人以上のデング熱患者が出た一四年夏には、東京都渋谷区の都立代々木公園の蚊からデングウイルスが検出され、公園が一時使用できない事態になった。

 二〇年の東京五輪・パラリンピックを控え、市内外で人の動きが活発化する。角さんは「外国から感染症ウイルスが持ち込まれ、蚊を通じて広がることも考えられる。採集は地味な取り組みだが、いち早く異常を察知するために必要」と話した。

◆記者のつぶやき

 蚊に刺されまいと、厚手の長袖と長ズボンで同行した。時折聞こえるプーンという羽音に首をすくめながらカメラを構えているうちに、蒸し暑さのせいですぐ汗まみれになった。滞在時間は約十分。取材を終えて帰りの道中、違和感を覚えて手首を見ると、何カ所かぷっくりと腫れていた。

 

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