東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 神奈川 > 記事一覧 > 8月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【神奈川】

<かわさき 市民健康の森>浮島町公園 川崎区  工業地帯の真ん中「海風の森」

園内に植えたさまざまな植物について語る小笠原由夫さん=川崎区で

写真

 大規模な化学工場や製油所が林立する川崎区沿岸部の埋め立て地。その一角にある公園で、住民団体が長年にわたって約六千本の木々を植えてきた。「海風の森」と名付けられた園内の森には、春の河津桜をはじめ、年間を通じて楽しめる百種余りの草花が育つ。鮮やかな緑色が、無機質な周囲の光景とコントラストを描いている。

 「活動を始めた当時は、本当に何もなかったんですよ」。住民団体「海風の森をMAZU(マズ)つくる会」代表の小笠原由夫さん(88)が、愛(いと)おしそうに木々に目をやった。二〇〇一年に結成された同会は、どんぐりから育てた幼木やハマナスなどを植え続け、今では百二十種以上になった。樹皮がコルクの材料になるコルクガシなど珍しいものもある。

 約三十人の会員たちが月に二〜三回集まって、草取りなどに汗を流す。公園は工業地帯の真ん中にあるため、約八キロ離れた川崎区追分に住む小笠原さんを含め、徒歩で来られるメンバーはいない。皆自転車やバスなど思い思いの手段でやってくる。

 公園は市内で最も東に位置し、多摩川対岸の東京都側に羽田空港の滑走路を望む。さらに海の向こうには、房総半島の工業施設群も見通せる。園内のベンチには、ジャンボジェットが離発着する様子を眺めてひと息ついている自転車愛好家たちの姿もあった。

 公園のシンボルは、〇五年に市が建てた三基の風車だ。風を受けて白色の羽根がゆっくりと回り、園内の照明などの電力をまかない、発電して余った分は売っている。小笠原さんは「周囲の建物が新しくなって風の流れが変わり、ここ数年は発電量が落ちてしまったようだ」と話す。

 市によると、メンテナンスをしている会社が風力発電事業から撤退したため、市は撤去も視野に入れて検討している。会員の河野和子さん(68)=幸区=は「クリーンな風力発電の風車は緑豊かな森にイメージが合う。何とか残してほしい」と望む。

写真

 一一年三月の東日本大震災で園内の地盤が一メートル以上上下し、ビオトープに被害が出た。心無い来園者が、せっかく植えた植物を抜いてしまうこともある。小笠原さんは「埋め立て地に緑豊かな場所があるというギャップが面白い。自分の庭のつもりで木々を育ててきた。多くの人に楽しんでもらえれば」と話し、額の汗をぬぐった。 (大平樹)

<市民健康の森> 緑の保全や市民のコミュニティーづくりを目的に、市が各区に1カ所ずつ整備した。1998年から2001年にかけ、区と区民らでつくる委員会が、地域の特色を生かせるよう場所やコンセプトの検討を重ねて区長に提言。その後、順次開設した。区民による管理運営組織が植栽の管理や観察会などを行っている。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報