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【神奈川】

検証30年 横浜華僑の歩み 幕末〜関東大震災 中華街の活動詳細に

30年の研究成果をまとめた本を手にする伊藤さん=横浜市中区で

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◆横浜ユーラシア文化館副館長・伊藤泉美さん本出版 「歴史刻むことできた」

 横浜開港資料館(横浜市中区)の学芸員などとして約三十年にわたり横浜中華街の歴史と文化を研究している伊藤泉美さん(55)が、その成果をまとめた本を発行した。横浜華僑を通史で扱った学術書はほとんどないといい、伊藤さんは「横浜中華街を学問的に検証し、歴史として刻むことができた」と話している。 (志村彰太)

 本のタイトルは「横浜華僑社会の形成と発展 幕末開港期から関東大震災復興期まで」(山川出版社)。A5判、五百二十ページで八千円(税別)。伊藤さんは横浜市立大で中国近代史、お茶の水女子大大学院で横浜中華街の歴史を研究。一九九〇〜二〇一七年度に同資料館の学芸員、本年度からは横浜ユーラシア文化館(同区)の副館長を務める。一六年度、横浜中華街の歴史研究で同大学院博士号を取得した。

 伊藤さんは横浜中華街の華僑三世と四世のルーツをたどる研究を続け、明治と大正期の統計や政府資料、新聞記事、写真、登記簿、中華街に残る史料を丹念に検証。横浜港開港後、日本と欧米間の貿易を仲介する通訳や両替商などとして入国、集住して中華街を形成し、関東大震災(一九二三年)を機に神戸など別の開港地に散らばった経緯を本に記載した。

 華僑が、大震災に加えて日清戦争(一八九四年)と日中戦争(一九三七〜四五年)があったにもかかわらず出国しなかった点にも着目。伊藤さんは「災害や政治的混乱があると外国人排斥運動が起こる傾向があるのに、横浜華僑は対象にならなかった。彼らが日本社会に溶け込む努力をしたのに加え、経済活動に不可欠だったり、日本人と結婚したり、社会的に必要とされたからではないか」と推測する。

 人のつながりを重視する華僑から研究者である伊藤さんが史料を提供してもらうのは大変で、「三十年間、横浜に根を下ろして研究し続けたからこそ本を書けた。横浜華僑の皆さんと一緒に完成させたと思っている」と話す。今後は、大震災後から現在までの横浜華僑史をまとめたいという。

 

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