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【神奈川】

<元気人@かながわ>福祉事業を手掛けるNPO法人理事長・鈴木しげさん(42歳)

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 いつもサングラスをかけている。三十一歳の時に不慮の事故で左目を失明した。「自分が不良品になった気がした」。でも落ち込まなかった。転機と受け止めた。「天命、これも意味あることなんだと。おかげでいろいろな人の気持ちが分かるようになった」

 NPO法人「シニアライフセラピー研究所」の理事長として、福祉事業を幅広く手掛ける。今年六月、藤沢市鵠沼海岸にデイサービスの利用者が作った料理を提供するレストランを開いた。認知症の人も包丁を握る。「危なくないのかと言われたけど、記憶は確かでなくても体はちゃんと使い方を覚えている」

 十年前から「働くリハビリ」をデイサービスに取り入れてきた。利用者には売り上げから謝金を払う。機能訓練にやりがいが太く絡み合い、利用者を生き生きとさせる。

 高校卒業後、米国に留学した。人種差別の感情が強い地域にあって、ボランティアで出会った障害児はごく当たり前に受け入れてくれた。その体験が今に至る仕事の根っこにある。

 二十五歳で福祉を職業に定めた。「利用者に楽しんでもらいたい」「自分が来たいと思う施設に」と考えて働いた。三十歳でNPO法人を立ち上げた。「最初は一人でのんびりとケアマネジャーをやろうと思っていた。でも目の前の人を幸せにしたいと思っても必要なサービスがない。それじゃ、自分でやるかと」

 「死ぬ前に富士山が見たい」と聞けば、「福祉有償運送」の許可を取って車を走らせた。独居の高齢者には話し相手が必要と、市と協働で「傾聴ボランティア」の育成事業に取り組んだ。「面白くなくちゃ」とマージャンや料理、ヨガなどがメニューに並ぶカルチャースクールをデイサービスと組み合わせた。

 障害者の就労を支援するカフェは身体、知的、精神の三障害を一緒に受け入れた。そこで利用者から「パン屋をやりたい」と声が出て、すべて国産・有機栽培の材料を使って障害者が焼き上げるパン店を開いた。

 「二〇二五年の介護保険脱却を目指す」と語る。自費でも利用したいと望まれるサービスを用意し、利用者やボランティアを輝かせたい。理想郷の実現に挑み続ける。 (吉岡潤)

◆私の履歴書

1975年 藤沢市で生まれる

 94年 米国に留学。国際交流や障害児らと接するボランティア活動を体験

 96年 帰国。ホームヘルパーなどとして働く

2000年 東京都内の介護老人保健施設に就職。02年から都内や横浜市で福祉施設の運営に携わり、05年に退職

 06年 藤沢市でNPO法人シニアライフセラピー研究所を設立

 07年 事故で視覚障害を負う。その後、毎年、障害者や高齢者を支援する事業を多角的に展開

 18年 藤沢市で認知症のデイサービス利用者が作った料理を提供するレストランをオープン

 

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