東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 暮らし > 暮らし一覧 > 3月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【暮らし】

<考えよう徘徊>(上)原因と特徴  無目的でなく行動に型

写真

 認知症の人が列車にはねられた事故をめぐる一日の最高裁判決は、場合によっては介護する家族が賠償責任を負うことがあるとの判断も示している。徘徊(はいかい)する人に、家族や地域はどう対処したらよいのだろうか。

 「アルツハイマー病で徘徊するお年寄りは、記憶に残るかつての自分に戻り、関係する場所へ行こうとすることが多い」。高齢者心理に詳しい認知症介護研究・研修仙台センター(仙台市)の加藤伸司センター長は強調する。

 すでに退職しているのに、それを忘れて以前の勤務先へ向かったり、とっくに取り壊した生家へ帰ろうとしたりするほか、子育て中の自分に戻って保育園へ子どもを迎えに行こうとする女性も少なくないという。

 認知症のため、記憶の一部が欠落してしまっているからだ。認知症でない人から見ると、徘徊は目的なく歩き回っているように感じるが、そうではないという。愛知県の認知症男性の家族にJR東海が損害賠償を求めた訴訟の地裁判決によると、男性も「東京へ仕事に行く」などとしきりに外出しようとしたとされる。

 加藤センター長によると、アルツハイマー病では記憶の欠落(もの忘れ)が避けられない。抜け落ちた記憶を想像で埋めるなどして本人なりに考えた結果が徘徊になっているとはいえ、無理に引き留めるとストレスになり、徘徊が悪化しかねない。

 代表的なもので四種類ある認知症のうち、アルツハイマー病は半数以上を占める。多くの認知症の人から話を聞いてきた加藤センター長は「アルツハイマー病の場合、現在の居場所に対する居心地の悪さに起因する可能性が高い」と指摘する。

 家族や施設職員の対応では、どのような人生を送ってきたかを知るなどコミュニケーションを深め、介護する人が気安い存在になれば徘徊が減る可能性がある。施設に入所していれば、自宅から家具を持ってくるなど、慣れ親しんだ環境をつくるのも一案という。

 前頭側頭型認知症も徘徊の症状が出やすい。

 前頭側頭型は認知症の1%程度と少ないが、欲望を抑えられなくなったり、人格が変わったりするのが代表的な症状。もの忘れはあまりなく、欲望のままお気に入りの場所へ向かおうとした結果、徘徊になる。

 外出を無理に止めると暴力を振るったりしがちで、「できるだけ逆らわずに、見守った方がいい」と加藤センター長。決まった時間帯やコース、目的地を徘徊する傾向があり、家族がパターンを把握できれば、本人が危険な目に遭わないようにしたり、他人に迷惑を掛けないようにしたりできる可能性がある。

 脳梗塞など脳血管障害によって起こる血管性認知症、幻覚が見えるレビー小体型認知症では、徘徊は起こりにくいが、特徴を把握した上でのケアが欠かせないのは同じだ。

 血管性は言葉を理解できたり、できなかったりと、認知障害がまだらに現れる。自発性が落ち、うつ状態にもなりやすい。レビー小体型は幻覚のほか、動きが緩慢になるパーキンソン症状を併発する。

 加藤センター長は「一口に認知症といっても、それぞれ別の病気といっていいほど違う。議論を呼んだ列車事故が認知症への理解を深めるきっかけになれば」と願う。 (諏訪慧)

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】

PR情報