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【暮らし】

3世代同居で子ども増える? 政府の少子化対策に専門家は

 政府が少子化対策として「三世代同居」促進策を掲げている。住宅建築やリフォームへの助成、減税を行い、両親に加えて祖父母に子育てを支えてもらうのが狙いだ。本当に子どもは増えるのか。少子化問題に詳しい立命館大の筒井淳也教授に聞いた。 (片山由紀)

 −三世代同居は少子化対策として効果があるか。

 効果はいまひとつ分からない。私の調査では、最初から親と同居する傾向が強い夫婦が子どもをたくさんもうける傾向があるだけで、そうではない女性が親と同居したからといって、出生率を上げる効果があるかは立証できていない。

 イタリアやドイツなど、子育てや介護のケア労働を主に家族に任せている先進国は、少子化を克服できていない。三世代同居をすれば、子育てや介護で家族の負担が増え、関係が悪くなる。結婚や出産から逃げる女性が増え、家族を持ちたいと思う人がさらに減るのではないだろうか。

 −福井県のように三世代同居が多く、出生率も高いという地域もある。

 土地が広く、大きな住宅が建てやすい地域性が関連しているのではないか。都市部ではまず無理だ。一方で鹿児島や宮崎などは三世代同居率は低いが、出生率は全国平均より高い。なぜ政府はこうした地域に目を向けないのか。介護費を抑制したいなど、何かほかの思惑があるのではないか。

 −子育て世代はどういう暮らし方が理想か。

 同居より親の近くに住む「近居(きんきょ)」の方がいいのでは。内閣府の二〇一二年の調査では、理想を「親と子どもの世帯で、祖父母(夫か妻の親)と近居」と答えた人は31・8%で、「三世代同居」より11ポイント以上多かった。そもそも三世代同居を希望する人は少ないという結果も出ている。

 −古い家族観を持つ支持者が、今の政権の後ろ盾になっている。

 本当に子どもを増やしたいなら、むしろ家族主義から離脱するべきではないか。家族が最後の頼みの綱になるような社会では、家族の形が崩れたときのリスクが大きい。社会保障費を充実させ、社会で子育てや介護を担う「ケア労働の外部化」を進める方が、国民は家族になろう、子どもを育てようと思うようになるのではないか。

 女性を家族に縛り付けず、自由にする方が子育てに有効ではないだろうか。そのためには、女性が長期的に働き続けられる社会づくりが必要だろう。

◆同居率と出生率の相関性

 自民党は2012年にまとめた憲法改正草案で「家族」に関する条項を新設。「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」とした。安倍晋三首相は「一億総活躍プラン」でも3世代同居を掲げる。

 10年の国勢調査などを基にした日本経済研究所の調査では、3世代同居率が高いのは山形県や福井県、富山県など。一方で同年の合計特殊出生率が高いのは沖縄県や島根県、宮崎県などで、必ずしも「3世代同居率の高い地域は出生率が高い」とはいえない。東京都の3世代同居率は3.1%、愛知県は9.3%だった。

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