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【暮らし】

妻の預金、解約できない 認知症状で意思確認できず

妻の治療費の領収書を確認する男性=名古屋市内で(一部画像処理)

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 「妻に認知症状が出て意思表示が難しくなり、妻名義の定期預金を解約できなくなった。どうすればいいか」と、名古屋市内の男性(85)から本紙生活部に相談が寄せられた。口座名義人の意思が確認できずに預貯金を使えなくなるトラブルが多発している。今後、高齢化で同様の問題がさらに増加することが予想され、銀行側も対応に苦慮している。 (寺西雅広)

◆銀行側「成年後見人を」

 「家族でも解約できないとは思っていなかった」。寝たきりの妻(84)を、長女(55)と二人で介護する男性は首を振った。「元気なころ、妻は何かあったら口座のお金を使ってと言っていたのに…」

 妻の異変は二月に始まった。夜中にトイレに行ったときに転倒し、胸を骨折。救急車で運ばれ、そのまま入院した。当初は意識ははっきりしていたが、入院生活が続くうちに記憶や発言があいまいに。そのうち会話がかみ合わず、歩けない状態になり、要介護3と認定された。

 六月下旬、男性は妻名義の定期預金を解約しようと、一人で銀行の窓口へ向かった。それまでの治療費など約百万円は、男性が自身の口座から支払ったが、妻の年金を積み立てた定期預金約六百万円を治療費に充てようと考えたのだ。

 ところが、銀行の窓口担当者からは意外な答えが返ってきた。「名義人の意思が確認できないと解約できません」

 男性はその場はあきらめ、妻の意識が比較的はっきりしている時に解約委任状にサインさせた。ところがその書類についても「誰が書いたか分からず、本人意思の証明にならない」と拒まれた。その際、判断能力が十分でない人に代わって、財産を管理する成年後見人制度の利用を勧められた。

 「妻名義とはいえ、二人でためたお金。そんな制度をわざわざ利用する気になれない」と男性は拒否する。

 妻の症状は進み、現在は要介護5。訪問介護の費用や介護用ベッドのリース代など月八万〜十万円は自身の貯金で賄えているが、「銀行はもう少し柔軟に対応してもらえないだろうか」と頭を抱える。

◆親族の請求に応じる場合も

 この銀行によると、名義人以外の人からの解約や払い戻しに応じないのは「相続トラブルや詐欺被害を防ぐため」としている。本人の意思確認ができないまま親族の解約や払い戻し請求に応じると、後で別の親族から「預金者の財産を守らなかった」などとクレームがつくケースがあるためだ。

 男性の事例では、銀行側は七月下旬に妻との面談を申し出たが、男性が「既に症状が悪化して話が分からない状態」として断ったという。

 このようなときに銀行は成年後見人制度の利用を勧める。昨年一年間で、全国の制度利用申立件数約三万五千件のうち、約八割は「預貯金等の管理・解約」が目的だった。

 ただ、全国銀行協会によると、すべての事例で制度利用を求めるわけではないという。預貯金を生活費や治療費に充てざるを得ない特別の事情があれば、親族らの請求に応じる場合もある。協会担当者は「明確な基準は決められず、ケース・バイ・ケースにならざるを得ない」と対応の難しさを明かす。

 家族ができる事前の対策として、一般社団法人日本相続学会の伊藤久夫会長は「定期預金を解約して、いつでも下ろせる状態にしておくなどに限られる。認知症になってからでは遅いためだ」と話す。

 

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