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【暮らし】

川遊び、ライフジャケットを 息子亡くした遺族が事故防止訴え

川の事故で一人息子の慎之介君を失った吉川優子さん。「水辺ではライフジャケット着用を」と訴える=東京都品川区で

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 全国で相次ぐ水難事故のうち、子どもが死亡したり行方不明になったりする事故は、海よりも川で多く発生している。幼稚園のお泊まり保育中に、川の事故で一人息子を亡くした遺族は「川辺では必ずライフジャケット着用を」と訴える。 (細川暁子)

 東京都品川区の吉川優子さん(45)は二〇一二年七月、一人息子の慎之介君(5つ)を川の事故で亡くした。当時、通っていた愛媛県内の幼稚園では初めての「お泊まり保育」の最中だった。

 当日の朝、慎之介君は「お母さん、一人で寝られる?」と吉川さんを気遣い、「頑張って行ってきます」と元気よく家を出た。園側は三十一人の園児を八人の教諭で引率。午後三時前から同県西条市の加茂川で水遊びをしていた。遊び始めた当初、平穏だった流れは、前日からの雨の影響で急に増水。慎之介君ら園児四人が流された。他の三人は助かったが、慎之介君は約二百メートル下流で川底に沈んでいるのが見つかった。

 「お母さん、落ち着いて聞いてください。慎之介君が鉄砲水に流されました」。教諭から連絡を受けて病院に駆けつけた吉川さんは、「見た瞬間、ダメだと分かった」。慎之介君が亡くなった後、吉川さんは十回以上現場を訪れ、川に入って事故を検証した。「流れが速く、大人でもひざ下まで水があり、足を取られそうだった」と話す。

 園側は、園児らにライフジャケットを着用させず、ロープや浮輪なども準備していなかった。吉川さんは、家族で海などに遊びに行くときは、必ず慎之介君にライフジャケットを着用させていた。「慎ちゃんにライフジャケットを持たせれば良かったと、悔やんでも悔やみきれない」と唇をかむ。

 吉川さんは一四年九月に任意団体の「日本子ども安全学会」を設立し、水難事故の再発防止を訴えてきた。今年七月に東京で開かれた安全工学シンポジウムでも、「水辺では必ずライフジャケットの着用を」と訴えた。啓発活動を続ける理由を「子どもを失う悲しみを誰にも味わってほしくないから」と話す。

 同会は九月十日に中央大(東京都千代田区)で第三回の大会を開く予定。水難事故の他に、保育や学校の事故をテーマに研究者らが講演を行う。問い合わせは同会のホームページ(会名で検索)。

◆子どもの犠牲 43%が河川

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 警察庁によると、二〇一五年に水難事故で死亡・行方不明になった人は七百九十一人。発生場所は海が52・8%で、河川が29・7%となっている。中学生以下の子ども五十三人に限ると、発生場所は河川が最多の43・4%。次いで海が28・3%だった。

 今年も、七月下旬に三重県松阪市の櫛田川で遊泳中の小二女児が死亡。八月上旬に栃木県大田原市の那珂川で川遊びをしていた中二男子が溺れて亡くなった。

 国土交通省によると、河川法上は国が川での遊泳を禁止することはできない。安全教育を行う公益財団法人「河川財団 子どもの水辺サポートセンター」特命研究員の吉野英夫さんは「川は身近にある分、警戒心が薄れがち」と指摘。川遊びではライフジャケットを必ず着用し、足が滑ったりけがしたりするのを防ぐため脱げにくい靴を履いて水に入るよう呼び掛ける。

 同センターは、ホームページで「全国の水難事故マップ」を公表。団体を対象に、ライフジャケットの貸し出しも行っている。

 

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