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【暮らし】

サービス利用、控える動き 介護保険見直しで負担増

妻の美子さん(右)を自宅で介護する岩下太郎さん=茨城県古河市で

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 昨年の介護保険見直しで一部利用者の自己負担が増加したのに伴って、介護サービスを抑制する動きが出始めた。「利用料が高くなり、生活が成り立たない」というのがその理由。高齢者のそんな声をよそに、国ではさらなる負担増が議論されている。 (出口有紀、添田隆典)

 認知症で要介護5の岩下美子さん(76)=茨城県古河市=は、四年間暮らした特別養護老人ホームを三月末に退去し、自宅で暮らし始めた。

 一人で介護する夫の太郎さん(67)によると、美子さんの収入は月十六万円の年金。特養の費用九万円に、診察代や薬代などがかかっても、夫婦が別々に生活するのが可能だった。

 ところが昨年八月に補足給付が厳格化され、食費と住居費が全額自己負担に。特養利用料は月額九万円台から十六万円台に増加し、美子さんの診察代や薬代などは、太郎さんの月十六万円の年金で賄わざるを得なくなった。「これまでは年金で何とかやりくりしていたが、負担増でいずれ生活が立ちゆかなくなる」と退去を判断した。

 美子さんは九年前に認知症と診断され、意思の疎通が難しい。車いすが必要で、トイレや着替えなど全面的な介助が欠かせない。特養からの退去後は週四回のデイサービスのみに切り替え、費用は月三万円台に抑えた。太郎さんは数年前、ホームヘルパー二級の資格を取得し、前向きに介護しようとしている。太郎さんは「私たちには子どもがいない。自分が健康を崩せば、妻も共倒れになる心配は尽きない」と話す。

 一方、名古屋市内に住む認知症の男性(91)も、介護サービス利用料が二割負担となり、週四回通うデイサービスの利用料が月三万円に倍増した。介護する妻(85)は「夫は家では自室に閉じこもりがち。それを防ぐためにも、生活は苦しいが利用回数は減らせない」と負担増を受け入れるしかなかったという。

 利用抑制の動きが表面化したことで、公益社団法人「認知症の人と家族の会」(京都市)は四、八月、二割負担への引き上げ撤回や、補足給付の要件を元に戻すことなどを盛り込んだ要望書を国に提出した。

 しかし、国は社会保障審議会で、二〇一八年度の制度見直しに向け、さらに負担を増やすかどうか議論を進めている。論点は、医療保険との比較。医療では七十歳以上でも現役並みの所得がある人は三割、それ以外も年齢によって二割を負担している。委員から「医療保険との整合性を図るべきだ」と、所得がある人のさらなる負担増を求める意見が出されている。

 厚生労働省介護保険計画課は「保険料が右肩上がりの中で、利用者負担だけそのままで公平と言えるのか、考えないといけない」としている。

◆さらなる負担は尚早

 <介護保険に詳しい東洋大の高野龍昭准教授(高齢者福祉)の話> 所得水準を考えると、二割負担となった家計へのしわ寄せは厳しく、長期的な利用控えに伴う心身の状態の悪化などが心配される。影響を十分検証しないまま、国が財政難のみを理由にさらなる負担増を議論するのは尚早だ。

 <介護保険の見直し> 給付費の抑制などを目的に、従来1割だった自己負担が、一定以上の所得がある人は2割に引き上げられた。65歳以上の夫婦だと年金収入とその他の合計所得金額が年346万円以上。厚労省によると、対象者は今年6月時点で59万人。さらに、自己負担が原則の特養の食費と住居費に関して、国は低所得者(本人が住民税非課税など)に補足給付として一部を補助してきたが、夫婦で2000万円を超える預貯金があったり、配偶者の所得が課税基準を満たしたりしていれば給付を受けられなくなった。

 

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