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【暮らし】

外国人の介護実習生解禁へ 言葉の壁など「受け入れ不安」

日本語習得に壁があるなどと話す専門家ら=名古屋市昭和区の名古屋柳城短大で

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 国は二〇一七年度中に、外国人の技能実習制度に介護を加える方針を打ち出した。介護人材の不足を補う効果があるとされるが、一月に名古屋市内であった介護実習生解禁に関するシンポジウムでは、福祉の専門家らから、制度導入を不安視する意見が相次いだ。 (出口有紀)

 シンポジウムは「福祉レジームと日本の転換点」と題され、京都大大学院文学研究科の安里和晃(あさとわこう)・特定准教授(移民研究)の研究室が主催。介護や社会保障などの専門家六人が討論し、市民ら七十人が聴講した。主な論点は、日本語と介護技術を習得する難しさと、受け入れ側の負担。

 まず日本語習得問題について、淑徳大の結城康博教授(社会保障論)は「習得が不十分な実習生が介護施設で働きながら勉強し、一年でN3に合格するのは難しい」と指摘した。

 経済連携協定(EPA)で就労している外国人介護職を調査した名古屋柳城短大の大崎千秋准教授(介護福祉)は「外国人は、日本人職員が手書きした書類を読んだり、介護計画を作ったりすることに困難を感じやすい」と現場での苦労を説明。

 さらに介護技術についても「介護者が立ったまま、座っている要介護者の食事介助をする国もあるが、上からだと誤嚥(ごえん)につながりやすい。まず日本人が相手の文化を理解し、座って介助する必要性を外国人に丁寧に説明しないといけない」とした。

 「介護の仕事には、コミュニケーション力のほかに、忍耐力と体力も必要。誰でもいいわけではない」と強調したのは、ベトナムで技能実習生向けの日本語学校を運営する中瀬謙さん(43)=長崎県諫早市。「実習希望者にどのレベルまで教えるかを事前に考える必要がある」と、送り出し機関任せになっている現状にくぎを刺した。

 実習生が増えるのと同時に、指導を担う日本人の負担増を懸念する声も出た。結城教授は「指導が大変になれば、日本人の専門職が、実習生がいない施設に転職する可能性もある。結局、介護士不足は解消されないのでは」。京都女子大の太田貞司教授(介護福祉論)も「施設ではベテランと中堅、新人の介護職がチームで動く。その中で初心者の実習生を育て、キャリアを積める仕組みを作らないといけない」と主張した。

 実習生が増えることで、日本で働く外国人の人権を守る大切さを訴えたのが、日本の外国人政策に詳しい筑波大の明石純一准教授(国際政治経済学)。「介護分野でも外国人技能実習生への人権侵害などが発生する可能性がある。注視するべきだ」と述べた。

 安里特定准教授は「教育にはコストがかかる。外国人が活躍できる社会をどう実現するかを考えないといけない」とまとめた。

◆日本語能力に厳しい条件

 技能実習制度は、日本国内の企業などで途上国の人材を受け入れ、母国の発展の担い手を育てるのが目的とされ、農業など74職種で導入されている。

 厚生労働省によると、新たに認められる介護分野では、介護常勤職員30人以下の施設は実習生が10%までなどの条件がある。実習生側には、来日時に日本語能力試験N4程度(基本的な漢字と語彙(ごい)を理解できる)の能力を求め、1年後にはN3程度(新聞の見出しで情報の概要が分かる)に達する条件を課す。

 受け入れの背景には、介護人材の深刻な不足がある。団塊の世代が75歳以上になる2025年度には、全国で約38万人が不足すると推計する。

 

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