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【暮らし】

<要注意!!クラッシャー上司> (中)異論許さず革新の芽つぶす

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 クラッシャー上司に注意せよ−。前回(2月27日)は、クラッシャー上司について「部下を精神的につぶしながら、どんどん出世していく人」と定義した。だが、害が及ぶのは人だけではない。所属する企業や組織にも災いをもたらす。前回に続き、著書「クラッシャー上司」(PHP新書)を書いた筑波大医学医療系産業精神医学・宇宙医学グループの松崎一葉(いちよう)教授(56)に聞いた。 (三浦耕喜)

 「クラッシャー上司は部下をつぶしますが、組織の問題も大きく絡んでいます。長年、精神科産業医として多くの職場を見てきたが、この国の多くの企業にクラッシャー的な傾向が強くあったと感じる」。松崎教授は組織の問題に切り込む。

 松崎教授が一例として挙げるのは、東芝の不正会計問題だ。二〇一五年に発覚したこの問題では、歴代三社長が部下に圧力をかけ、「チャレンジ」などの言葉で利益の水増しを迫ったことが明らかになっている。

 今年二月には、東芝が決算発表を延期した原因をめぐり、新たな疑惑が浮上。米子会社が手掛ける原発建設で生じた巨額損失を少なく見せるよう、首脳が部下に圧力をかけた疑いが表面化し、既に退職している複数の元部下に賠償金を支払うリスクが出てきた。

 「東芝の信用は失墜し、経営危機に陥った。でも、部下に圧力をかけた上司は私利私欲で不正を働いたのではないだろう。むしろ、会社を救うためという『善』の確信すら抱いていたのではないか」と分析する。

 ところが、破綻は目に見えているのに、その恐ろしさに気付かなかった。「クラッシャー上司は全体を俯瞰(ふかん)する力を欠いているからです。それは、苦しむ部下の気持ちが分からない『他者への共感性の欠如』とも重なります。自分が正しいと確信するあまり、一歩引いて別の視点から見ることができないのです」

 クラッシャー上司は、部下を巻き込んで一方向に盲進する。異論も許さないので、間違いを正す兆しにも気付かない。なのに、間違いを起こしても、上層部に取り入る巧みな政治力で自身の地位を守り、悪いのは暴走した現場だと部下をネチネチ責める。あらゆる職場で共通する構図だろう。

 激動の時代、あらゆる企業にイノベーションが必要だ。だが「クラッシャー上司はイノベーションの芽をつぶす」と、松崎教授は言う。

 なぜか。「自分こそ『善』という誤った確信を持っているので、自分と異なるタイプの部下を排除しようとするからです」

 イノベーションの種は「多様な人材を積極的に活用しようというダイバーシティー(多様性)の考えを実行している組織であるほど、見つけやすい」。そんな種に気付いた上司が「面白いね」と評価し、どうすればこの発想を伸ばせるかと伴走することでイノベーションの突破口が開ける−というのが松崎教授の見解だ。

 クラッシャー上司は目先の利益は上げることがあっても、じわじわと人材を損ない、長期的には企業の未来をもつぶす。その危険性は分かったが、企業のあちこちにクラッシャー上司がいる。今この瞬間も毒を吐き、巨大化する上司がいるのだ。この現実にどう立ち向かうか。続きは十三日の紙面で。

 

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