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【暮らし】

関心高まる「無痛分娩」 下半身麻酔で陣痛を軽減

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 出産の痛みを麻酔で和らげる「無痛分娩(むつうぶんべん)」。近年、日本でも関心が高まり、無痛分娩ができる病院が増えている。痛みが少なく産後の回復が早いなどの利点がある半面、費用は自己負担となるほか、まれに副作用が起こることも。無痛分娩を選ぶかどうかは、メリットとデメリットをよく理解した上で決める必要がある。 (河野紀子)

 「分娩時の体力消耗を少しでも軽減し、産後の家事・育児が自分でできるように無痛分娩を選んだ」。東京都文京区の順天堂大付属順天堂医院で出産した都内の女性(38)は言う。

 三人目の出産で、初めての無痛分娩。夫は麻酔の影響を心配したが、女性が事前に医師から説明を受け、不安はないと伝えると納得してくれた。麻酔が効くまで陣痛がつらかったというが、「生まれる直前からほとんど痛みを感じなかった。産後の生活は一、二人目に比べてはるかに楽だった」と振り返った。

 無痛分娩は、背骨の中の脊髄を包む硬膜の外側に細いカテーテルを通し、麻酔薬を投与する「硬膜外鎮痛法」が主流だ。妊婦は陣痛がきた後、ベッドに横になったり座ったりした状態で麻酔を投与される。意識は保ったまま、下半身の痛みを和らげることができる。

 日本産科麻酔学会のホームページによると、米国では、帝王切開ではなく経膣(けいちつ)分娩した女性のうち、六割が無痛分娩を選択。英国やドイツ、ノルウェーでも全分娩の二割に上るなど、広く浸透してきている。日本では、二〇〇八年の調査で全分娩の2・6%だったが、無痛分娩に詳しい医師によると、数年前から増えているという。

 通常の分娩と比べてメリットは何か。順天堂大産婦人科学講座の竹田省(さとる)主任教授は「出産の痛みを取るのはもちろん、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの場合は、血圧や血糖値のコントロールがしやすくなる」と話す。

 出産では母子の状態により緊急帝王切開になることもあるが、無痛分娩の場合はすでに挿入してあるカテーテルからすぐに麻酔をして手術に移れる。順天堂医院では、産科と麻酔科の医師が常駐し、二十四時間体制で無痛分娩に対応。経膣分娩の妊婦のうち、八割が無痛を選んでいる。

 注意すべき点もある。順天堂大麻酔科学・ペインクリニック講座の角倉弘行教授によると、麻酔の影響で出産の時間が長くなるなどして、鉗子(かんし)や吸引で出産を助ける器械分娩が増える傾向にある。出産後、まれに頭痛や自分で尿を出せなくなる人もいるが、多くは二、三日で改善する。無痛分娩の費用は自己負担のため、通常の分娩に三万〜十六万円が上乗せされる。

 ただ、都市部以外では、無痛分娩ができる病院が少ないのが現状だ。硬膜外鎮痛法は専門的な技術が必要だが、麻酔科医が確保できずに、麻酔の経験不足の産科医が行うケースもある。日本産婦人科医会は一四年、「無痛分娩の麻酔は産科麻酔の十分な研修を受けた医師が担当する」よう求める提言を出した。

 角倉教授は「無痛で産むことを希望する妊婦は増えている。産科医と麻酔科医が連携し、安全性の高い無痛分娩を提供していきたい」と話した。

 

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