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【暮らし】

<食卓ものがたり>生でかじる春の甘み ブロッコリー(愛知県)

「今くらいがちょうどいいの」とブロッコリーを採る牧野幸男さん=愛知県大府市で

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 「生でかじってみなよ。アメリカ人は生で食べているんだって」

 その日の午前四時半に採ってきたというブロッコリーを手に、名古屋市緑区南大高の農業牧野幸男さん(62)が勧める。えー、ゆでないの?と思いつつ一口かじる。おお、意外といける。かむうちに甘さが口の中に広がっていく。「茎も甘いよ」と言うので、茎もかじる。普通なら捨てている部分だが、甘みはこっちの方が強い。

 「四月の真ん中辺りまでが、ちょうどいいんです。まだ虫が付かない。だからほとんど農薬をまいていない。そのまま食べられます」。うなずきながら、おかわりの茎をかじる。

 愛知県は農業県でもある。県農業振興基金の「よくわかるあいちの農業2016」によると、ブロッコリーの全国シェアは愛知県が第三位。田原市など東三河が主な産地だが、名古屋市でも栽培している。

 その拠点はJAなごや大高支店(同市緑区)。L玉十二個入りで換算すると、年五万ケースを出荷。名古屋市の学校給食にも使われているという。地産地消の「食育」のためだ。

 それでは畑を拝見と、同支店の江崎伸行さん(50)の運転で支店を出る。しばらく走り大府市内へ。名古屋市内にも畑はあるが、今一番実っているのはここだという。

 畑は三十アールほど。「また来とる」と牧野さんは手をたたきながら走り始めた。畑から鳥が一斉に飛び立つ。「ヒヨドリです。ブロッコリーの葉を食べる。玉は食べないが、玉に乗って足場にするので傷つく。ふんを置いていくやつも」

 名古屋市内にあるブロッコリー畑も見せてもらった。四方を住宅に囲まれた畑。道の向こうに高架の通る幹線道路が見える。

 「建物に囲まれれば日も当たりにくい。ここもいつまで畑で置いておけるか」。江崎さんがつぶやいた。

  文・写真 三浦耕喜

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◆味わう

 春のブロッコリーがこんなに甘いのか。これブランドになりますよ。そう言うと牧野さんが答えた。「なので40年ほど前に生産者クラブができたが、都市化や後継者不足で…」。生産者は減る一方。気候変動で春も短くなった。「朝に採り、その日のうちに出す。玉が傷つかないよう立てて箱入れしているのですが」。店頭に並べば「愛知県産」とひとくくりにされるが、分かる人には分かってほしい。「大高」と記された箱の面を向けて写真を撮った。その晩。「茎も甘いよ」と聞いた妻は茎も軸もミキサーにかけてポタージュを作った。「春の匂いね」。食卓が華やいだ。

 

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